2016.02.14 大洗磯前神社で包丁式を見る 〜秘儀:アンコウ吊るし切り〜(その1)




冬の味覚のアンコウ神事を見て参りました (´・ω・`)ノ



さて本稿は、当初は長大なドライブ紀行の一部として書き始めたのだけれど、何となく独立させたほうが話がわかりやくないか?…的に思えてきたので別記事として再構成してみたものである(^^;)

何を見てきたのかというと、大洗で冬の味覚として珍重されている鮟鱇(アンコウ)を祀る神事で、前座としてアンコウの吊るし切り、続いて神前で魚に一切手を触れずに捌(さば)く包丁式という儀式である。神事が行われたのは茨城県の大洗磯前神社。平安時代初期に建立された1150年あまりの歴史をもつ古社だ。

…といっても、実をいうと今回はこの神事を見に来たわけではなく(笑)、偶然遭遇して面白かったので別枠としてレポートしてみるものである。そんなわけで神事以外の部分は思いっきり省略しているのだが、抜けている部分は別途フォローする予定なので、ひとまずはご容赦を頂きたい(^^;)



 

■ 大洗磯前神社




ということで、途中はすっぱり省略していきなり大洗である。…いつもこのくらい割り切りのよい構成にすると簡潔になりそうな気もするけれど…まあ、そこはそれ(笑)




ついでに神社の歴史も省略! …おお、すっきりしすぎだ(笑)




それはともかく、磯前の鳥居を眺めて境内に上がると、いつもより人の出入りが多くて驚いた。実は筆者はここで初めて鮟鱇包丁式の案内板を見たのであった。



不覚にもまったくノーチェックだったのだが、本日は大洗の代表的な海の幸である鮟鱇(アンコウ)の神霊に感謝を捧げる神事が行われる日であった。そういえばこの日は冬の祭りの集中日であった。ちゃんと下調べをしてくれば良かったな。




ところで何故本日が祭りの集中日かというと、建国記念日に直近の好日だからである。日本の冬の神事は建国記念の日(2/11)がスタンダードで、ただし今年の2/11は陰陽道でいう六曜で仏滅だったことから、直近の休日で好日となる本日(先勝)が祭りの最有力候補になるのである。



基本的な雑学だが日本の冬祭りは初代天皇にあたる神武天皇(↑)が即位した日=皇紀元年(約2670年前)の1月1日が基準になっている。これを太陰暦(旧暦)から太陽暦(新暦)に切り替わった明治6年に新暦2/11(=紀元節)と換算したのが現在の建国記念の日の原型で、要するに "君が代" が始まった日+旧暦の正月なので神事がこのタイミングになるのである。(今年は六曜との関連で直近の週末になっているところが多いようだが ^^;)

よくよく注意すると、神社とは一見無関係にみえるレジャー系の観光イベント(雪祭り等)でも、賽の神などの伝統行事とセットになって2/11の前後に集中しているものが多い。現在の主催者がどこまでその意味を理解しているかはよくわからないが、すくなくとも初回を開催した人々はちゃんと理解して日程を決めていた筈である。
 
※ちなみに戦後の町興し系の祭りの始まった時期は昭和40年代が突出して多い。これは戦後GHQによって消滅させられた紀元節が、祝日法の改正に伴い "建国記念の日" として復活(昭和41年)したのに合わせたもののように思える。戦後発祥の冬祭り(雪祭り)がまるで判を押したように同じ日に集中しているのは、かつての祭りの文法がいまだに生きていることの証左ともいえそうだ。



 

■ これが鮟鱇(アンコウ)だ!



さて話を戻そう。境内に入ると、いきなり1m以上はありそうな巨大な魚が吊るされていた。

おお、これが鮟鱇(アンコウ)!
でかいっ、グロいっ、不細工っ …!
ヽ(`◇´)ノ




…とは言いつつ、この一見不気味な姿をした深海魚が、実は大洗の冬の味覚として観光産業を支えているのである。いわゆるひとつの "アンコウ鍋" というやつで、これを食べるためだけに茨城県にやってくる人も多い。




アンコウのシーズンは真冬だそうで、特に肝臓(アンキモ)に脂が乗ってくる1月〜2月が旬とされる。寒い地方であるほど身が締まって美味といい、漁獲としては日本国内どこでも取れるのだが、関東以北のものが良いと言われている。

ただ筆者は残念ながらアンコウ鍋は食べたことがなく、どんな風味なのかは想像の遥か彼方である。境内にいた人によると、身はあっさり、キモはねっとり、らしいのだが……それってどんな味やねんw

※写真はWikipediaのフリー素材を引用



さて怖そうな面構えをまじまじと見ると、鼻先にはヒモのようなものが垂れていた。どうやらこれをネコジャラシのように使って小魚をおびき寄せ、パクっと捕食するらしい。漫画絵でしか見たことがなかったのだけれど、本当に付いていたんだな…(´・ω・`)



 

■ なぜかここで戦車登場



さて儀式が始まるまで少し時間があったので、付近を散策してみた。

神事の行われる舞台の前には、もう人だかりが出来ている。最前列は既に埋まっており、これだとバリアングルモニターを駆使して人だかりの頭越しに撮る作戦でいくしかなさそうだ。

…ん? それはそうと、向こうに見えているい聊(いささ)か場違いな巨大絵馬は…




大洗町の新名物、戦車道なのであった♪(^^;)

ここはアニメ紹介サイトではないので詳細は控えるけれども、実は東日本大震災で観光客が激減した大洗はこれで町興しをして観光客数がV字回復した経緯がある。最近はこういうスタイルの観光振興が増えていて、実は大洗はかなり成功している部類なのだ。




…ただ副作用として、神社の奉納絵馬はすっかりそっち方面に置き換わってしまって(笑)、伝統的なデザインのものはほぼ駆逐されている。果たしてこれで良いのかは、…まあ、アレだ(笑)




…ということで、神社の駐車場にこういう痛車が停まっていたのもそういう文脈なのだな。

うむむ。


<つづく>