2016.07.30 那須高原の牧場地帯を行く(その1)




那須高原を流して参りました(´・ω・`)ノ



さてしばらく更新が停滞している間に夏が来てしまった。オンシーズンの那須は渋滞だらけでなかなか出歩くのにも大変だったりするのだけれども、今回は比較的空いている牧場エリアをゆるゆると流してみることとしよう。

本日のコースは、まずは敷島牧場(ファーム)でゆったりと景観を眺めて昼食をとり、那須フラワーワールドで百合を眺めてから中大倉山(マウントジーンズスキー場)に登ってみるというシンプルなものだ。出発したのは日も高くなった10時少し前で、首都圏から来訪する方なら朝一番で那須ガーデンアウトレットに寄ってから移動しても十分に間に合うくらいの時間帯+コースにしてみた。



 

■ 観光渋滞を避けて逆張りをいく




今年は梅雨明けが遅く、明けたのちも山沿いは雲が多くて視界がいまひとつ…という日々が多い。しかしこの日は朝から夏らしい日照があって空もそこそこに青かった。こういう日はやはりスカっとドライブに出かけたい♪




とはいえ観光渋滞があるので、この時期の那須では茶臼岳方面は避けていくのが鉄則である。

夏休みシーズンの週末は特に東北自動車道路:那須ICから湯本方面に向かう県道17号線=那須街道が渋滞ポイントになる。ぎりぎりアプローチしても支障がないのは道の駅:那須高原友愛の森あたりまでで、そこから山寄り側は一度ハマると脱出の難しくなる魔の領域(^^;)だ。




筆者は那須塩原駅を出発したのち、那須疎水に沿って小結まで進み、那珂川を渡って田代から広谷地までは那須街道を通って(このエリアはまだ比較的通行可能)、そこから池田方面に折れて混雑エリアを抜けた。

写真は地域ローカルスーパーのダイユー付近で、対向車線には那須高原SAのスマートIC(※)から流れてきたらしいクルマが渋滞をつくっていた。みな茶臼岳方面を目指していくように見えるけれども、ぶっちゃけた話、いまから目指しても到達するのはほとんど不可能のような気がする。

※NEXCO東日本は最近那須ICの混雑緩和のために那須高原SA(スマートIC)、黒磯板室ICからのアクセスを推奨していて、お蔭でr21、r30の混雑具合が上昇傾向にある。


那須高原渋滞MAP

余談ながら、この季節の渋滞MAPはだいたいこんな(↑)イメージで捉えていれば良いと思う。観光客が集中するのは東北自動車道の各ICから那須ロープウェイと殺生石(湯本温泉)に向かうルートで、そこに到達できなかった人々が周囲に散るような形で移動していく。ここを避けて動いていれば、ハイシーズンでもまあそんなに酷い状況には陥らないと思う。




筆者はと言うと、池田の交差点から県道68号線に抜けて北方を目指した。この先が那須の牧場エリアで、商業施設が少ないこともあって渋滞とは無縁の世界が広がっている。



 

■ 敷島ファーム




そんな訳で、まず訪れたのが敷島ファームである。そんな牧場あったっけ…と思う方は、昔の "安愚楽牧場" ですヨと言われるとピンとくるかもしれない。

安愚楽牧場はかつて和牛繁殖を投資商品に仕立てて派手な出資募集を行っていた商社(たぶん…農業法人とは言わない?)であった。高額配当をうたって全国のお金持ちから4000億円あまりの巨額の出資金を集めたものの、事業はうまくいかずに2011年に破産し、現在は綺麗さっぱり消滅している。ここはその本社の跡地である。

安愚楽牧場は最盛期には全国で38カ所もの牧場を経営して10万頭以上の牛を飼っていたそうだが、それも今は昔の沙羅双樹。兵(つはもの)ならぬ、欲の皮の突っ張った投資家の方々の夢の跡…となっている。




現在は経営主体が敷島ファームなる農業法人に替わっていて、どういう資産の処分をしたのかはよく分からないのだが、規模を大幅に縮小して肉牛の生産は継続されている。敷地内には安愚楽時代に作られたリゾートホテルもあり、今回筆者が訪れたのはそこの食事がなかなか美味と聞いたのでちょこっと寄ってみたくなったという次第なのだ。




経営母体は変わっても設備はほぼ昔のままで、景観に変わりはない。

難を言うなら本日は少々雲が多いところだろうか。ここからは茶臼岳、旭岳の雄姿がよくみえて天気がよければ撮影スポットとしてもナカナカなのだが…(^^;)




正門から一本道を進んでいくと、黒毛和牛が草を食(は)んでいるのが見えた。




酪農家の中の人によると放牧している牛は "霜降り" にはならないそうで、ステーキに向いた赤身肉が多くとれるという。筆者は牛肉というと "霜降り=高級" という短絡的な発想をしてしまいがちなのだが、霜降りばかりが高級品というわけではなく、求める肉質によって育て方はいろいろあるらしい。…へぇ (´・ω・`)




さて、そのままどんどん奥に進んで行く…のだが、いったいどこまで行けばよいのだろう?




ん? …奥にコテージみたいな建物が見えてきたな。




バタタっ…と音がするので見やると、雉(きじ)が飛び回っていた。かつて1万円札のデザインにも使われていた日本の国鳥である。牧草地にはこれがとても多く、あちこちで見かける。

…が、あっというまに草むらの中に消えてしまった。派手な色彩の割に忍者みたいなヤツだ(^^;)



 

■ ホテルフロラシオン那須




やがて奥まったところにリゾートホテル(フロラシオン那須)が見えてきた。リゾートホテルという割には高層ではなく、フロント+レストラン+売店を兼ねたエントランス棟と宿泊棟が3つ並んだ構造になっている。低層なのは牧場の景観を壊さないためらしい。

安愚楽時代には金満投資家を接待するための宿泊施設だった…とも言われるけれども、現在では割とリーズナブルな料金で泊まれるホテルとなっていて、意外と穴場的なスポットのように思える。




中に入ってみると、そこそこ高級感のあるちゃんとしたホテルだ。

フロントで 「ここに非宿泊者でも入れるレストランがあると聞いてきたのですが」 と尋ねてみたところ、建物内のレストランではなく屋外の別棟のところを奨められた。ただし営業は11:30からだそうで、開店まではもう少々待たねばならない。



…ならば少々、付近を探索してみるか。




そんな訳で、駐車場の向こう側に広がる牧草地に出てみた。これはさきほど遠くから見えていたコテージで、本日のところは閉鎖中だったが、なかなかいい感じの造りになっている。




コテージからの眺めは素晴らしい。ここはちょっとした丘の上で、遠くまでよく見渡せる。

柵の向こうに居る白い動物はヤギだ。メスが10頭、オスが2頭ほどいた。酪農事業を成立させるには少なすぎる気もするが、おそらく肉用でも乳用でもなく、観光的な演出のために飼われているのだろう。…といっても、そのためにこれだけの空間を割り当てているのだから贅沢な話である。

※ちなみに牛舎は奥の白い建物群で、さらにその向こうに放牧地が続いている。




しばらく眺めていると、草を食みながらそろり、そろりとヤギが近づいてきた。これはメスである。




こちらはオス。去勢はされていないようで、実に立派な金精様がぶら下がっていた(笑)

…ということは、一応繁殖は試みているのだな。




■ 散策路へ




まだもう少し時間があるようなので、散策路に足を延ばしてみることにしよう。あたりには百合の花が多く咲いている。平地ではシーズンの終わってしまったアジサイもいくらか咲いていて、おもしろいコラボが見られた。




牧場敷地内の散策路はそこそこ小奇麗に整備されている。観光名所…と言うほどの規模はないけれども、宿泊客が付近で適度なリゾート感を味わうには十分だろう。外部から入ってきた客もこのあたりは無料でウロウロできるので結構なお得感がある。




敷地内には、沢も流れている。いかにも蛍が居そうなところで、宵の口に散策するとイイカンジで夕涼みができそうだ。




それにしても…今更ながら、こんな環境があったとはちょっとしたサプライズだったな。




これらはみな旧安愚楽牧場の置き土産ということになるのだろう。おそらくは投資家へのアピールを狙って整備されたもので、それが今ではすっかり様変わりして遺跡のようになっている。…まさに、諸行無常というほかはない(^^;)




さて散策路はまだまだ続いているのだが、そろそろレストランのオープン時刻なので戻ることにしよう。




そのレストランとはこんなところである。なんとなく洋風の煉瓦造り。聞けばイタリア風の意匠を取り入れているらしい。那須はどういうわけかイタリア風の建物が多いな…(^^;)




…で、料理は 「とりあえず肉っ!…適当なコースでっ!」 ということで基本的にお任せにしてみた。いちいちウェイター氏が 「○○産の△△の□□風でございます」 と説明してくれるのだけれど、よくわからないので 「さようでございますか、ははははは」 のイエスマン状態(笑)




肝心の肉はたしかにちゃんとしていた。ここはグルメサイトではないのでいちいち凝った表現はしないけれども(笑)、まあ普通にうまい部類である。

気になったのが筆者以外の客層がなんだかお上品そうな方々ばかりで、ちょっと場違いな気分があったところだが(^^;)、まあそこはそれ。喧騒とは無縁の森の中なので、静かな高原の空間を味わいたい人には、ちょうどよい休憩所になりそうな気がする。


<つづく>