2016.10.10 那須:姥ヶ平の紅葉(その2)



 

■ 巻き道を行く




そんなわけでそそくさと歩き始めてみる。むむ・・・一見すると青空も見えるが、山頂にはもう雲がかかっているな。高層の鱗雲っぽいものの下に中層の雲層があって、それが実に悩ましい高度で山を覆っている。




ロープウェイの山頂駅から200mほどで、山頂コースと巻き道コースが分岐する。姥ヶ平への最短コースは左の巻き道なのでそちらに進んでいく。ガンコウラン(高山植物)の緑の絨毯の中にちらりほらりと見える赤っぽい点が、紅葉し始めたドウダンの小木だ。




色づき具合は、まだ走りの頃か。赤はぼちぼち立ち上がって来ているけれども、緑が残っているので鮮やかさはいまひとつ。これだともうあと数日待ちたいところだな。




ここから牛ヶ首までは高低差のない平坦な道が続く。

茶臼岳本体は溶岩ドームを主体とした山容で、紅葉の綺麗な樹木は登山道(巻き道ルート)より下側にしか生えていない。健脚な方は那須温泉神社から伸びている行人道を登ってくると、ちょうど真っ赤な広葉樹林の群落の中を通ってくることになる。




その行人道はこの(↑)写真では正面の谷の底にある。あちらはぼちぼち色が乗ってきているようだ。




上から見下ろすとちょうど紅葉の立ち上がりがいい感じになっている。

この付近は風(→大陸からやってくる冷たい気流)の通り道で、ロープウェイ方面よりもいくぶん冷え込みが厳しい。この日はちょうど緑〜黄〜赤 の遷移状況が印象派の絵画のような色彩を見せていた。・・・ただ登山道からこれら木々までの距離はちと遠いので、倍率のそれなりにある望遠レンズでないと写真を撮るのは少々厳しいかもしれない。




赤い木々の群落に隣接して、その向こう側にはダケカンバの群落が斜面を覆っている。ダケカンバは "黄葉" の樹種で葉は早々に散ってしまう。そして白い幹が残って、一歩遅れてやってくるウルシ、カエデ、ナナカマド、ドウダンなどの赤色の木々と面白い対比をみせる。この日は南月山の北麗斜面がちょうどそんな様相になっていた。




そのまま、ゆるゆると巻き道を進んでいく。




紅葉の谷間はだんだんと高度を上げて、やがて牛ヶ首の手前で森林限界に達する。




登山道から見下ろせる谷底は東西方向に約1.5km、標高は1400m〜1700mくらいの地形になる。標高の低いほうはまだやや黄色身が残り、高い方が赤味が強めに見えているのは、紅葉の走りの頃だから・・・という理解でよいのかな。




道端のドウダンに近づいてみるとこんな感じであった。黄色から赤に染まる途上で、風の当たるところなのでロープウェイ方面と比べると色づきは進んでいる。




これがもう、ワーっと連続している。毎年同じような構図で申し訳ないけれど、ひとまずこれを撮らねば筆者の秋は始まらないので儀式みたいなもの(笑)だと思っていただきたい。




行人道と巻き道の合流点付近に来ると、ちょうど写真映えする頃合いになっていた。




見上げるのではない、見下ろす形の低木の絨毯。高さはせいぜい膝から腰くらいまでで、見渡す限りの盆栽園みたいな状態になっている。しかしこれらは決して幼木ではなく、結構な古株なのである。風の通り道ゆえになかなか成長できないのだ。



 

■ 牛ヶ首




やがて茶臼岳〜南月山の稜線鞍部=牛ヶ首にやってきた。




ここから見る南月山方面の笹の緑と紅葉の対比はなかなかに趣がある。みな姥ヶ平の方が気になってスタスタと通り過ぎてしまうのだけれど、ほんの数百メートルの距離感で遷移していく植物相のグラデーションは美しく、ぜひともゆっくりと堪能したい。

※ここはちょうど山影になって風の当たりにくい斜面になる。膝くらいの高さまでしか伸びることのできない谷底面とは少々趣が異なっている。




さて尾根の向こう側を見ると、雲がクラウド〜〜っと沸き立っていた。




この日、牛ヶ首の峠部分(1740m)ではそれほど風を感じなかったが、ほんの100mほど上空では西から東へとかなり強い風が吹いていたらしい。見れば噴煙がほぼ横一直線に流れている。山頂に向かった人は視界が効かなくて大変な思いをしているんじゃないかな。




さて肝心の見姥ヶ平を見下ろすと、こんな(↑)感じであった。雲が出てきて日差しはなくなってしまったけれども、色づきはそこそこ良さそうだ。3℃未満の累積日数が3日だと 「見頃のぎりぎり条件」 ということになり、果たしてどうか…と思わないでもなかったが、このあたりはまあ経験則通りということかな。


<つづく>