2017.04.16 那須の桜を眺める(その2)




■  那珂川河畔運動公園




埼玉開拓を過ぎてからは、黒磯公園と那珂川河畔運動公園に立ち寄ってみた。この2つの公園は事実上連結した一体のエリアで、那須東原では最大の桜の名所になっている。




高砂町を経由して黒磯公園にアプローチしていくと、やがて公園のある桜町に至る。その名の通り桜の多い雅な街並みである。

ただこちら側から公園の駐車場に入ろうとすると、交通整理の係員が 「満車なので河畔公園側に回ってください」 と無慈悲な誘導中であった。むむ・・・仕方がない、それでは河畔公園のほうから攻めてみるか。




そしてやってきた那珂川河畔運動公園の駐車場。おお、桜に並んで柳の新緑がイイカンジになっているな。柳の芽吹きは落葉広葉樹の中では群を抜いて早く、この時期の河原ではほとんど唯一の緑になる。




桜は文句なしの満開、青空をバックに順光で採るとなかなかに爽やかだ。




ちなみにこういう桜を撮影するとき、カメラのオート露出に任せっぱなしだと冴えない色彩になりやすい。カメラの適正露出は濃度18%のグレーを正確に写すことが業界標準の仕様で、白っぽい桜の花は "適正水準より明るい" と判断されてアンダー露光気味になりやすいのである(※)。

こういうときは1〜2段ほど明るめに露出補正をしてやるとちょうど具合がよくなるので覚えておきたい。

※ピンク色の強い枝垂桜などはこの限りではない




川向こうの段丘面をみると、芽吹きの遅い落葉広葉樹林の中で、やはり桜と柳が一足早い春のワンポイントになっていた。




さてこちらはグラウンド脇の桜並木。電線のない解放空間なので写真映えする。




堤防に登ってみるとこれまた見晴らしがよい。ざっと眺めると、家族連れあるいは彼氏彼女の複数人で来ている人がおよそ6割ほど。犬を連れている人が1〜2割で、一人で歩いているのはどうやら少数派らしい。・・・みんなリア充なんだなぁ!(^^;)




土手下に菜の花が咲いていたので、それを前景にして桜と青空を撮ってみた。この季節ならでは色彩で菜の花と桜はよく似合う。河原では油菜(あぶらな)というよりは芥子菜(からしな)であることが多いような気もするけれど、いずれにしても黄色の主成分はアブラナ科の植物である。




・・・おっと、あまり一か所に長くとどまっているのもアレだな。ということで公園内をそそくさと周遊してみよう。同じ桜といっても枝垂桜は開花期が若干遅く、まだ見ごろには早いようだ。新緑はほぼ柳一択で、あと1〜2週間もすればその他の木々も芽吹いてくるだろうけれど、今はまだ淡いままのようだった。




一方でヤシオツツジはちょうど満開であった。この樹種は山ツツジより開花期が早く、山岳部にあっては河原の桜と同じように枯れ木の中の一刺しの紅となる。来週あたり塩原渓谷に行くといい感じで咲いていそうだな。




ただ色彩の分量としては、桜の薄桃色と菜の花の黄色がこの時期の主役のように思える。そこに遠景の山の残雪を加えれば、誰が見ても文句のない春の風景だろう。




■ 黒磯公園




さて気が付けば予定よりも少々時間を喰いすぎていることに気づいた(^^;)。ここで河岸段丘を登って黒磯公園側に抜けてみよう。




段丘下にはカタクリの自生地もあり、ちょうど紫色の可憐な花が密集していた。桜に比べると注目度はやや及ばず・・・といった感があるけれども、こういう小さな春もチェックしておきたい。




2つの公園をつなぐロータリー式のぐるぐる階段は、地上10mほどの枝の高さで至近距離の花見ができるポイントになっている。ここは自撮りの名所(?)であるらしく、桜をバックに自分を写す人が多い。

見ればちらほらとアジア系の外国人らしい人が居り、こんな田舎でもなにやら国際化がじわじわと進んでいるようだった。




階段を登りきると那須連山までの視界が広々と広がる。




邪魔な建物や電線、看板といったものが一切ないクリーンな春の風景。運動公園と黒磯公園は名目上は別の公園ということになっているけれども、こうしてみると那須連山を借景として事実上一体の景観を構成していることがわかる。設計した人のセンスはなかなかに良いと思う。




ところで事実上一体ではあっても、それぞれの公園には特有の性格がある。それは造成年代による時代の空気のようなもので、注意してみていると面白い。せっかくの機会なのでそのあたりにも少々触れてみたい。

まず明治時代〜昭和初期に造られた公園には神社が付属していることが多く、神社の境内≒公園という構造がある。また戦後間もない昭和30年代の造営ブームで作られた公園には、神社は付属しないものの戦没者慰霊碑が置かれることが多い。黒磯公園は昭和32年開園なのでここに属している。

これら古い年代の公園には、地元の歴史や事件、慶事、偉人の顕彰などを刻んだ "碑" が多くあり、それらが郷土の歴史を刻むタイムカプセルのような役目を果たしている。要するに公園そのものが地域の履歴書みたいな性格を帯びていると思っていい。




ところが昭和60年代のバブル期以降になると、これらがすべて吹っ飛んで "レジャーの場" としての公園が主流となり、急速に無個性化してしまう。ぶっちゃけたところ、そのまま他の地方に持って行っても違和感なく収まってしまうくらいに地域の匂いがしなくなるのである。那珂川河畔運動公園は1993年開園なのでバブル以降組であり、このグループに属する。見ればたしかに、レジャーの場にはなっても那須塩原市固有の顔というのはなく、無名ののっぺらぼうになっている。

しかし黒磯公園と一体化することで、地域性の部分を黒磯公園で補いながら、景観を保持するといううまい役割分担が成立した。そういう点で、ここは面白い構造をもっている。できればもう少し河畔公園側で地域情報を発信してほしいところだけれども・・・まあ、ここで言っても仕方のないことではあるかな(^^;)(※)

※本来なら河畔公園側には黒磯発祥の地に関する碑とか解説版の設置を希望したい。江戸時代の原街道の渡河ポイントでもあるので、そのあたりの解説板があってもいい。公園の管理者よ、目覚めよ〜!(^^;)




さて評論はそのくらにして桜の方に目を向けてみよう。こちらも満開で、花見客は多い。以前は大音量のカラオケが流れていたこともあったけれど最近は静かにくつろぐのがトレンドのようで、これはこれで平和でよろしい気がする。




向こうにみえる遊具類は最近改修されて微妙にリニューアルされたようだ。見れば幼稚園〜小学校低学年くらいの子供たちがワーワー言いながら遊んでいる。

子供が外で走り回るのは、そうでないよりずっといい。こんな晴れた日には、のびのびと遊んで自由を満喫してほしいところだな。




さて先に訪れた東那須野公園とちがって、黒磯公園にはテキヤの屋台がひしめいていた。筆者はタコヤキと大判焼きをGETしてエネルギーチャージ。




おっと、もう昼が近いな。さてここからは、もうすこし山側に向かってアプローチしていこう。


<つづく>