伊達で牽引フックをつけてみる




趣味と実益を兼ねて伊達で牽引フックをつけてみたのでレポートしてみたい。

牽引フックはなんちゃってドレスアップパーツとしてしばしば装着されている例を見かける。ニッサン車だとスカイラインに多い。もともとはサーキットを走るスポーツカーに装着(サーキットでは故障時の牽引用に必要)されていたものだが、公道で付けられているものはほぼファッション向けの 「なんちゃってフック」 である。以前は突起物にあたるというので車検が通らないと言われていたけれども、現在では規制が緩和(日米自動車摩擦の結果らしい)されて溶接やリベットでガッチリ固定されていなければ特に問題とはされない。

筆者はエクストレイルでサーキットを走る予定はないけれども、雪の季節の実用と、駐車場の中で愛車を識別する目印を兼ねて伊達フックをつけてみることにした。




ちなみに法的に牽引フックの扱いはどうなっているかというと、国土交通省所管の独立行政法人(車検における保安基準への適合性の審査を行っている)のHPのFAQにある指定部品に該当している。これは車体のサイズと重量の変更が一定範囲内であれば "軽微な変更" とみなして許容されるというもので、溶接やリベットで固定してしまうとアウトになるがボルトで固定されるタイプはOKとして扱われる。牽引フックより巨大なヒッチやトウバー(トレーラーハウスなどを引っ張るやつ)もこの指定部品の範疇にある。

この指定部品は旧運輸省令の道路運送車両の保安基準(延々改変が積み重なって本稿を書いている2016年2月の段階で最終更新が2015/10/08)に従う必要があるのだが、この条文を読むよりも運輸局の整備主任者研修の研修教材のほうが分かり易い。牽引関係の部品は31pの 1.車体まわり関係の(3)その他の部品 に含まれている。

※もし筆者の理解が間違っているようならどなたかご指摘いただけるとありがたいです(^^;)




さて最近のクルマでは牽引フックはバンパーの内側にボルト穴だけがあって、カバーを開けて別途付属のフックをねじ込む方式になっている。しかしエクストレイル付属のフックはこんなデザインであんまりイカしていない。




そこで市販の可倒式フックをチョイス。Amazonなどでは安価なアルミ製のなんちゃってフックが出回っているけれども今回はちゃんと鋼材でできたものを購入した。メーカーによると限界荷重の保証はしていないが設計上は1tくらいの荷重には耐えられるとのこと。雪道スタックの場合はクルマの荷重は基本的にタイヤが支えていて、救助車に引っ張って貰う際にかかる荷重はせいぜい200〜300kgfがいいところだろうから、まあ必要十分だろう。

このフックはエクストレイル T32 では可倒部を90度曲げるとバンパーの先端部よりちょっとだけ内側に入り、車両全長に影響しない。

※筆者は長距離の牽引に使うつもりはなく、雪道スタックの脱出用に一時的にロープをかける以上の用途は想定していない。元々はレーシング仕様だったりするので邪魔になったら外してしまおうと思う。




これをフックカバーを外して装着すると微妙に間延び(バンパー内の発泡スチロールが露出してカッコ悪い)するので、筆者は無塗装のフックカバーを購入して穴開け加工+塗装することにした。当初は自分でドリル加工しようと思ったのだけれど幸いディーラーで引き受けてくれるというので、餅は餅屋…ということでお任せしてしまった(^^;)。フックカバーは無塗装品だと\850と安価なので3個発注し、2個までは加工失敗しても良いという条件である。

結果は…ディーラーの整備工場はさすがにプロフェッショナルで、一発成功。塗装は\5000くらいかかったけれども仕上がりは上図の通りで、チタニウムカーキの色が綺麗に乗った。ただほとんど黒に近い色なので、チタニウムカーキに限らずボディ色が濃いクルマの場合は無塗装品に穴をあけるだけでもいいかもしれない。

※今回ディーラーはフタの加工をしたのみでフックについては何も保証していない。このあたりは自己責任の世界なのであれやこれやと文句を言ってはいけない。





さてこれをオリジナルのフックカバーと換装して可倒式フックをねじ込んでみよう。




出来はこんな感じである。ねじ込み角度はぴったり90度で止まってはくれないので多少の調整が要る。この写真の状態ではまだ先端はプラプラしている。




調整はワッシャーで行うのが手っ取り早い。今回は近所のホームセンターでゴムワッシャーを購入して適用した(M12がちょうど合う)。




調整後のエクストレイルの全体像。違和感なくうまく落ち着いたように思う。




ちなみにフック部を上から見るとこんな収まり具合である。先端を折り曲げるとたしかに車両長は越えていない。




…ということで、しばらくはこの状態で過ごすこととしたい。興味のない人には 「だから何だ」 的な内容だけれども、まあそこはそれということで。つけっぱなしでいるか外すかは、まあ気分次第かな。

<完>





■ あとがき…というか補足というか


牽引フックは通販で割と見かけるパーツなので 「えいっ」 と付けてみましたが、「これって本当に合法なのか?」 と図らずも国土交通省の役人の作文と格闘することになってしまいました。調べてみるほどにクルマの規制というのは 「誰得?」 という感じで雁字搦(がんじがら)めになっていて、非常に面倒です。ひとまずフックは指定部品という黄門様の印籠効果でOKということになっているようですが、車検でダメだしされたら素直に外すことにしましょうかね…(^^;)

それはさておき、どうしてこんなものを付けようと思ったかというと、そもそもは牽引フックを取り付ける際にバンパーのフタを開ける手段が 「ドライバーを突っ込んでこじ開けろ」 というのが不便に思えたからでした。地吹雪の深夜に氷点下の峠道でスタックしたような場合、カバーをコジコジするような繊細な作業がうまく出来るとは限りません(絶対にボディを傷だらけにする ^^;)。その点、可倒式のフックを最初から瑳しておいてちょいと起こして引っ張る、というのは魅力的に思えた訳です。




そういう話を書くと 「そんなに牽引する機会があるのかよ」 とツッコミがありそうですが、冬季の山岳路では珍しいことではありません。博愛精神がどうこう言う以前の問題として、"どいてもらわないとこちらが進めない" という状況も多いのです。

ちなみにこれ(↑)は那須の峠道でスタックしたクルマ(スバル:レガシィ)を筆者のエクストレイル(以前のT30)で救出しているところです。雪の中ではエクストレイルは毎度毎度レスキューする側で、足のしっかりしている筈のスバル車を何台引っ張ったか知れませんが、こんな環境ではお上品にマイナスドライバーでコジコジなんてやってられません。救出活動とは軍隊よろしく 「総員、雪を掘れーっ!」 「イエッサー、ウォォォ!」 …なノリの場面ですからね。




ただ色々調べたところ、最近の車はこういう救出する/されるという関係が成立しにくくなってきていることもわかりました。燃費を稼ぐための軽量化が進みすぎて、安価な車種ではボディがもう牽引に耐えられるかどうかわからないくらいペラペラになっているのだそうです。フックが消えた車種、緊急用と称して形だけ形状を残した車種などが増えたのはその表れなのだそうで、燃費向上がこんな形で副作用を及ぼしているとは驚きです (´・ω・`)




実のところエクストレイル T32 もその風潮に侵されていて、筆者はニッサン本社に 「どうよ?」 と直接問い合わせてみたのですが、ボディ剛性については実に歯切れがわるい。 これだと今回装着した牽引フックは本当に "伊達" で終わってしまうかもしれません。うーん…。

<おしまい>