2011.04.17 それでも桜は咲いたのさ(その1)
桜風景を巡ってみました〜 (´・ω・`)ノ
震災で慌しかった3月も過ぎ、4月がやってきた。世間では相変わらず地震と原発問題が尾を引いているけれども、一部の人の期待したような世界の終わりなどは訪れず、季節はゆっくりと巡っている。そんな訳で桜を中心に花風景などを巡ってみることにした。
■自粛、自粛、自粛…の中、桜の季節がやってきた
さていきなりだが1週間ほど遡(さかのぼ)って、これは4/8の熊谷の風景である。今年は桜の開花が遅く、例年よりも1週間ほど後ろ倒しで見ごろとなった。…が、公園に出かけても人がいない。震災による津波被害の凄まじさが連日報道されている中、世の中はすっかり自粛モードに突入しているのである。
おかげで直接的な震災の影響をほとんど被(こうむ)らなかった地域も含めて、春のイベントや花見の機運はさっぱり盛り上がらず、各地の桜祭りなどは軒並み中止となってしまった。熊谷では地震とはどう考えても関係のなさそうな春のマラソン大会まで中止されてしまい、世間の雰囲気は限りなく暗く沈滞している。
こちらは夕暮れ時の荒川河川敷である。桜は見ごろを迎えているのだが、出店はなく花見客もほとんどいない。
日が暮れて夕闇に沈みつつある桜並木。
…いつもの年ならここは夜桜見物の客が多く訪れる場所なのである。しかし今年はライトアップも中止になり、まるでお通夜のような雰囲気になってしまった。なんだかなぁ…(´・ω・`)
■その頃、那須塩原では…
さて一方、那須塩原市ではいつもの年より遅く田起こしが始まった。 土壌の放射線が基準値を下回っていることが確認されるまで作付けが延期されていたのだが、それもほぼ全域で解除となった。やれやれである。
干からびていた那須疏水の末端水路にも水が流れ始める。
聞けば水を張った水田で代掻きをして何度か水が入れ替わると土壌の洗浄の効果があるという。筆者にはその効果の程度はよくわからないが、早く騒動が収束してくれることを願いたい。
そして、いつもの場所のいつもの桜は何ごとも無かったかのように咲いているのであった。自然の摂理には人間の都合や気分に合わせた自粛などというものはない。これまでもそうだったし、これからもそうなのだろう。そして、それでいいのである。
…そんな訳で、ゆるゆると桜のある風景を尋ねてみよう (´・ω・`)
■黒磯公園
さてまずは那珂川河畔の黒磯公園/河畔公園に向かってみる。ここは河岸段丘の崖を挟んで2つの公園が隣接しており、那須連山を背景に視界がきく。春の風景としては非常に絵になるポイントである。
花見客の人出は、若干少ないような気もするがまあまあの賑わいであった。地元では首都圏の行き過ぎた自粛ムードには追随しないという意思決定をし、例年通り桜祭りを開催した。筆者的にも妥当な判断だろうと思う。
祭りといっても売店が出るくらいで特に派手なアトラクション等はない。エネルギーを消費しまくる都市型エンターテイメント施設と違って、田舎の花見というのは実に簡素である。しかしこんな程度であっても、普段どおりに行われることで民心は安定するし、人出があることで地域経済もまわるのである。地味ではあるが、これは重要なことだ。
出店の並ぶ一角に入ってみた。客足もまあまあで、これを見る限り桜祭りの開催はひとまず成功と思ってよさそうだ。
花見客以上にホッと胸を撫で下ろしているのは周辺の商店街やテキヤの主人氏だろう。なにしろ祭りがひとつ吹っ飛ぶことで収入は目に見えて減ってしまう。 そしてそれは、テキヤのみならず人が集まってなんぼの観光地の地域経済全体にとっても余波が大きい。こういう季節イベントで巡っている地域経済もあるのだということを、軽々しく 「自粛」 を口にする偉い人は、考えてから発言してほしいと筆者は思う。
さてそんな人間の都合は置いておいて、肝心の桜具合はというと…これはもう、申し分ない。桜が最も美しいのは満開になる直前くらいなのだが、今年は週末と開花具合がドンぴしゃりで適合し、しかも晴天になった。順光で素直に写真を撮るにはこれ以上の条件は無い。
願わくば、この桜前線が北上して、東北の人々に幾許(いくばく)かの希望を与えんことを祈ろう。
■片栗
さて黒磯公園と那珂川河畔公園を隔てる河岸段丘の崖沿いに、木道が通っている。桜に隠れて微妙にマイナーな存在ではあるが、ここにはもうひとつの花見スポットがある。
それは、カタクリ(片栗)の群生である。
決して派手さはないが、ここには春を告げるのに相応しい可憐な花絨毯が広がっている。
カタクリは不思議な生態をもつ植物で、地上に出ている部分は花が咲き終わると枯れてしまい、根の部分が残ってまた翌年に花を咲かせる。発芽してから最初の花が咲くまでに7年以上を要し、もし人工的に栽培しようとすると非常に手間のかかる植物でもある。つまり簡単に増やそうと思っても、なかなかそうはいかない。それがここには無数の群生を形成しているのである。
かつてはこれがそこらじゅうの土手に自生しており食用としても広く用いられていた。しかし今では宅地造成などによってその分布域は急速に縮小し、この付近ではこうして公園内に取り込まれた部分のみがかろうじて維持されている。食用としてはジャガイモにその地位を譲り、名前だけが "片栗粉" として残った。
カタクリは栃木県内だと佐野市の三毳山に大規模な群生があるそうで、県北だとこの黒磯公園が最大の群生地ということになるらしい。
案内板みるとここを整備しているのは自然保護団体のようで、そこに地元の観光協会と商工会が協力する形になっているようだ。観光資源化することで現状を固定する理由付けをしている訳だが、まあどんな形式であれ保護の方向に舵が切られたのは良いことだろう。
段丘部の斜面沿いに1kmほどに渡って細長く続く花の帯は、地形を見る限り当初から残そうとしたものではなく、公園の造成が終わってから "再発見" されたような感がある。崖の上に黒磯公園、崖の下に那珂川河畔公園が造成され、その間に残された使い道のない斜面部が未活用のまま放置されていた。…そこに、カタクリが咲いていたのである。
残り物には福がある…というけれど、ここに残されていた 「福」 は、ちょっとばかり大きくて豊かだ。 崖の上の桜もいいけれど、せっかく公園に来たからには足元のささやかな花の群生も忘れないでおきたい。
<つづく>
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