2013.04.28 GWの那須野ヶ原(その2)
■小結
その後は、那須野ヶ原北端付近の新緑具合を眺めながら小結(こゆい)を経由してふたたび青木方面を目指していく。西岩崎からわずか1〜2km下流側に下っただけだが、このあたりは萌黄色の新緑具合がイイカンジになっている。辺りには鳥の声も響いていて、まさに春うららという風景だ。
…ところで、こういう雑木林は地元民にとっては特に珍しくもない風景なのだが、同じ栃木県民でも南の方の人に言わせると 「ウチの周辺とは全然違う」 「さすがは高原らしい風景だ」 などと指摘されることが多い。
最初は気のせいかと思ったのだが、何人もの人がそろって同じようなことを言うので、どうやら一定の普遍性をもった認識なのだろう…と、筆者は最近思うようになった。
調べてみると、これはどうやら栃木県が植物学上の分類(垂直分布帯)で言う山地帯と丘陵帯のちょうど境界付近にあたっており、北と南で植生が異なるためであるらしい。
…つまり、ちゃんと理由があったのである。
ここでちょこっと雑学を記しておきたい。
林業関係者の間ではよく知られている話らしいが、足利 ‐ 宇都宮 - 黒羽 - 馬頭 を結ぶラインは年間平均気温13℃の境界線になっているという。大雑把にいって、これより北側が寒冷、南側が温暖とされていて、13℃という数値はそのあたりで自然林の植生が変わることから植物学上で用いられる境界温度のひとつである。
もう少し詳細にいうと、13℃より寒い地方は山地帯(注:地形とは関係なく植物の垂直分布モデルから来ている分類)と呼ばれる気候区分となっていて、これは落葉広葉樹林の分布域である。つまり冬季には葉を落として丸裸になる木が多い。こういうところでは春になると裸の幹ばかりでスカスカになった森に一斉に若葉が芽吹いて明るい景観になる。
一方、13℃より暖かい地方は丘陵帯(または低山帯)と呼ばれる気候区分で、常緑広葉樹林(照葉樹林)の分布域にあたる。つまり冬季でも葉の落ちない植物が多く、自然に繁茂している雑木林は冬季でも丸裸にはならず一定の緑を維持している。常緑樹は年中すこしずつ葉が落ちて若葉に更新されていくため、春になっても一斉に森全体が若葉色で染まるような景観にはなりにくい。
だから特に春先の芽吹きの季節には、互いに森の印象が違ってみえるというのである。
もちろん気候区分というのはゆるやかに移り変わっていくもので、国境線のようにきっちりと分布が分かれる訳ではない。また街路樹や人工的に植林された山では気候区分と植生区分が一致しないことも多い。
しかしそれでも、こういう雑学を知っておくと、地域によって何気ない風景の印象の差がどこから来るのか考察する材料のひとつにはなるだろう。
この季節、首都圏からやってくる観光客の多くは、この13℃ラインの存在は知らなくても 「何となく那須や日光の風景は東京近郊とは違う」 ということを無意識下で認識していて、そのうえで新緑を求めてやってくる。これは植物学的な観点からみると、丘陵帯 ⇔ 山地帯 の気候区分を越えることで、その環境変化を愉しんでいる…という切り口で説明できるのかもしれない。
そうだとすれば、地元の人間よりもこういう 「越境組」 の人々のほうがより景観に対しては鋭敏な捉え方をしているのかもしれず、感受性もまた豊かなのかもしれない。(その割に行き先が買い物スポットにばかり集中するのは何なのか…という気はするけれども ^^;) …まあ話半分にしても、こういう捉え方で考察を深めるのはちょっとばかり面白い。
さてにわか勉強の雑学はそのくらいにして、風景の話に戻ろう。
首都圏からの環境変化という点では、雑木林の風情に加えて、広々とした牧草地が広がっているところもこの付近の景観ポイントを高めている。純農業的には開拓期に十分な水が得られず "水田が作れなかった" という文脈から出発している風景だけれど、長らく水田を基調に暮らしてきた日本人にとって、こういう牧畜系の風景と言うのはやはりある種の新鮮味をもって受け止められている。
那須野ヶ原における牧草地の分布は、那須疎水によってかなり明確に分けられている。疎水より山側の、水利を得にくい地域が広々とした牧草地になっているのである。
そして小結から青木、さらには千本松にかけての那須疎水本管が、その分布の大雑把な境界線となっている。実際には那須疎水の下流域にあっても "水利権" がないと勝手に水は引けず、多少の大人の事情が入ってくるのだが(^^;)、まあ風景写真を撮りたいだけの暇人カメラマンにはそのへんは無用の話だろう。とにかく、"牧草地の風景を撮りたい" という程度であれば那須疎水より山側の農地をウロウロすればロケーションには事欠かない。
…さてそうやってウロウロしている間に、牧草地と雑木林の間に整地だけして更地となっている場所をみつけた。何年も放置されているうちにタンポポ野原になってしまったようで、一面の黄色い絨毯となっている。
都会ではこういう未利用地はビルの谷間で "廃墟" のテイストを帯びていくものだけれど、田舎では雑草に覆われながらも何かしら開放的で明るい風景になっていく。
…不思議なものだな (´・ω・`)
<完>
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