2014.05.03 新緑の那須を周遊する:前篇(その3)
■ 関谷
関谷では、宿場町エリアはすっとばして道の駅:アグリパル塩原に立ち寄ってみた。ここはr30界隈では矢板市街を抜けて初めて遭遇する公共の休憩施設になる。
時刻は午前8時を少しまわったあたりだが、駐車場は8割方埋まっている。うーむ…さすがに集客力のある塩原温泉郷の入り口だけあって、人もクルマも多いな…(^^;)
車両ナンバーを見るとやはり他県のものが多い。みな東北自動車道の西那須野塩原ICからR400を通って来たのだろう。ここは渓谷の入り口の補給地&休憩施設という立地で、ファミレス、コンビニ、ガソリンスタンドも隣接しているので行楽客のベースキャンプのような使われ方をしている。車中泊組が多いのも特徴のひとつだ。
そう言っている間にもクルマは続々とやってくる。まあ観光地としてはありがたいことなんだけれど、地元の住人としてはこれに如何に巻き込まれずにやり過ごすか…ということが地味なテーマというか、生活の知恵(?)の見せ所だな(^^;)
ところで此処に立ち寄った筆者の真の目的はというと、ご当地名物キウイソフトクリームを堪能することだったのだが…店舗に入ろうとしたら、なんとまだ "準備中" であった orz
…ぐぬぬ( ̄▽ ̄;)
仕方がないので、ここは翌日にリベンジした写真を張り付けるに留めて(笑)、先に進むことしよう。
※…というか、これだけ客がいるのだからGWの最中くらい早朝営業してくれないものかね(^^;)
■ 牧草地(日の出開拓)
さて時計をみるとそろそろ8:30…既にロープウェイ方面と塩原温泉方面はクルマが集中しはじめる時間帯になっている。やがて渋滞でにっちもさっちも行かなくなった行楽客が周辺に分散し始め、それ以降は万遍なく渋滞が拡散していき、午後2時を過ぎると今度は帰省渋滞が始まる。
これに巻き込まれないためには、なるべく午前中に主要スポットをハシゴして速やかに撤退するのが賢い選択である。とにかくR400(塩原街道)とr17(那須街道)の周辺は鬼門なので注意していこう。
それはともかく、関谷といえば日の出開拓の牧草地を眺めるのが筆者のこの季節の定番なので、すこしばかり脇道にそれてみた。
開拓農地は今年も緑の絨毯となっていて、比較的寒冷地であるためか大田原(湯津上)で見た牧草地よりは葉の色がまだ幾分若々しい。
防風林を兼ねた雑木林の萌木色は、この季節の那須野ヶ原の象徴みたいなものである。これは落葉広葉樹が広がる年間平均気温13度ラインより寒冷な地域に特有の春景で、冬に葉の落ちる木々が多いため春に一斉に芽吹く新緑の色が映えると言われている。
ちなみに栃木県南部は13度ラインよりも温暖な地区になり、冬でも落葉しない南方系の常緑広葉樹が多くなる。
参考までに益子町の西明寺界隈の1月の様子(↑)を紹介すると、まあこんな感じである。このあたりには椎(しい)の常緑樹林が多く、真冬でも葉が殆ど落ちない。こういう樹種では年間を通じて少しずつ葉が世代交代していて、春だからといって一斉に芽吹きが起こることはない。
※人工的に落葉樹を植樹した公園や街路樹などは除く
そういう植生の地域に住んでいる人が那須や日光などの高原地帯にやってくると、特に春の風景の圧倒的な新緑のあかるさに驚くことになる。かくいう筆者も、仕事の都合で東京で数年過ごして戻ってきたときに、その色彩にあらためて感心したことがあるくらいだ。
こういった新緑の木々は、牧草地の広々感と絶妙にマッチして鮮やかな風景をかたちづくっている。
派手なレジャーランドでこそないけれども、風景をゆったり眺めるのであればこういう一歩奥まったところに入り込むのがいい。時間に追われず、ゆったりと昼寝でもしてみるくらいの余裕を持ちたい。
■ 蛇尾川
さてふたたびr30に戻ってゆるゆると北上し、蛇尾川(塩那橋)に至った。ここにもちょっとした展望駐車場があるので川の様子を眺めて行こう。
蛇尾川は普段は水が流れていないのだが、雪解けの季節には一時的に水流が現れる。この水がなかなか綺麗で筆者はたびたび河原写真を撮っていたりするのだ。
…ん? それにしても…以前とは川の流れが微妙に違う気がするぞ。
そう思って撮影アングルの似た昔の写真(2011)を引っ張り出してみると、やはり変動しているようにみえる。水の流れる日数は限定的でも、その浸食力はちょっとバカにできないものがあるようだ。…水の力って結構スゴイじゃん(笑)
その水の供給元は、もちろん山に積もった雪である。ここからは大倉山の残雪がよくみえる。あちらは那珂川の水源地帯(七千山水源の森)で、このぶんならまだしばらくは雪解け水による増水基調が続くことだろう。那須疎水の水源も実はあの山に頼っている。
一方こちらの蛇尾川の水源地帯は、塩原の奥にある日留賀岳の一帯である。残念ながらここからは手前の小佐飛山の影に隠れて日留賀岳本体は見えないが、やはりこの時期はまだ残雪があり、それが融けて、山々の土に浸みわたり、小さな流れとなって沢となり、それが集合して川となって流れ下ってきている。
その間、せいぜい10km程度の距離感で、この水は水源とつながっている。どこから引いているのかよく分からない大都会の水とちがって、本籍地が非常に明瞭でわかりやすい。
※念のために補足しておくと、蛇尾川の水は砂礫に浸透する直前に蟇沼用水に引き込まれ、現在では那須疎水の水系に統合されて相互に融通されている。普段河原に水は流れていなくても下流域の住民はちゃんとその恩恵をうけており、決して浸透してしまうだけの無駄な水にはなっていない。
夏場は水が引いてカラカラに乾く河原に、水草や苔の類はない。そこに今の季節にだけ、サラサラと透明な水が流れていく。生物相の豊かな那珂川や箒川と比べて妙に小ざっぱり感があるのは、そんな川の性格が影響しているのかもしれない。いずれにしても、この地域特有の春の風景である。
<後編につづく>