2021.10.02 紅葉の鳥羽口紀行 ~敢えてプランBを行く~ (その3)




■七ヶ岳方面に転進

 


田島で紅葉の端緒がつかみにくい状況だったので、当初の予定通り七ヶ岳方面に向かうべく転進した。会津西街道を南下して、荒海からR352に分岐して西進するコースを行く。




荒海付近から見る七ヶ岳はこんな山容である。南北に七つの峰が連続し、雪の季節に見るとなかなかにアルペン的な雰囲気のある山だ。人工的な植林はほとんど見られずブナの原生林に覆われている。ここの山頂の紅葉は、那須の姥ヶ平より幾分か早い。




七ヶ岳は標高こそ 1636m に過ぎないものの、稜線部は200mを越える切り立った断崖になっている。そのためアプローチはどうしても登山路を徒歩で登っていくことになるのだが、幸い山の南端部には 「たかつえスキー場」 のゲレンデがあり、ロッジ付近まではクルマで登っていくことができる。

今回はもう午後になってしまっているのでロッジから山を見上げるくらいしか出来そうもないが、とにかく行ってみよう。

※スキー場のリフトは紅葉の時期でも営業はしていないので、山頂を目指したい場合はやはり徒歩で登っていかねばならない。




スキー場にアクセスするには会津西街道(R121)から分岐してR352を行く。この道は会津から尾瀬を経由して新潟県の魚沼に至る街道で、冬季には尾瀬方面は閉鎖されてしまう季節性の回廊である。

七ヶ岳山麓からこのR352にかけての傾斜地は高杖原と呼ばれ、冬季にはスキー場として賑わう。 R352からは八総の集落から分岐する道を3kmほど進めばスキー場である。




高原リゾート地とは言っても山間部であるので人口は少ない。R352から外れたとたん、人家は極端に少なくなった。




道端には桜の紅葉が見え始めた。ここはR352からの分岐部から間もないところで標高は700m。上三依塩原温泉口駅とほぼ同じで、場所は変わっても桜の紅葉条件はだいたい一緒であるらしい。




■ たかつえスキー場




そうこうしている間に、高杖スキー場に到着した。

商売気がないのか、ここは紅葉の季節になってもゴンドラの営業はしていない。ただし七ヶ岳の登山口でもあるので入場制限などはなく、ゲレンデには誰でも入ることができる。




紅葉チェッカーで見るとこの日のたかつえスキー場は最低気温15℃未満の累積日数が41日、8℃未満が7日、5℃未満が1日という状態であった。本日最初に立ち寄った那須ガーデンアウトレットよりは冷え込んでいるけれども、楓の紅葉トリガーとしてはまだ弱い。



しかしそれでもゲレンデ内の白樺はぼちぼち黄葉を迎えつつあった。ダケカンバも含めて樺(かば)の樹の仲間はちょこっと葉が黄色くなったら瞬く間に散ってしまう薄命な樹種だ。楓の赤が立ち上がってくる頃には幹だけが残って白骨のようになってしまう。その意味では今日はそこそこ良いタイミングで見ることができたと言えるかもしれない。




ちなみに白樺の黄葉はこんな感じで、銀杏よりは幾分渋めの黄色になる。過去の事例からみると最低気温8℃未満の累積日数がが10日くらいで色づいているようで、一斉に黄色になる訳ではなく桜のように葉が個別かつバラバラに色づいては片っ端から落ちていく。




こちらはヌルデだろうか。ウルシと似ているけれど枝野部分に薄い葉がつくので区別がつく。野草の中では色づきの早い植物だ。




こちらはシラキ……かなぁ。ちょっと自信がないけれども、アキアカネが留まっていていい感じなので撮ってみた。



こちらはゲレンデ内にある山桜っぽい樹。もうだいぶ赤みを増してきている。ここの標高は970mあまりで山頂との差は600m以上あるのだが、紅葉の早い樹種ならばそろそろ秋の被写体になりそうな気がする。




とはいえその他の木々はようやく幾分か黄色味が乗ってきたくらいで、観光客を呼べるほどの色づき具合ではない。これでゴンドラが営業していたら、もう少し冷え込み具合の進んだ山頂まで5分くらいで行けるのだけどな。




その山頂の稜線南端が、木々の間からちょこっとだけ見えていた。




望遠で目いっぱい捉えてみると、ぼちぼち色は乗ってきているようだ。




山頂の気温推移を紅葉チェッカーで見ると8℃未満の累積日数が24日、5℃未満が11日、3℃未満が1日といったところ。これだと黄葉は進行、赤色はぼちぼち色づき始めといったところだろうか。本格的な見頃(特に楓、満天星などの赤色系)になるには3℃未満がもうあと2~3日欲しい。




手持ちの300㎜ではこれ以上寄れないのでデジタル拡大してみた。空気層を3.5kmほど挟んでいるので見えにくいけれども、よく見ると赤色の立ち上がりはちょこちょこ来ている。一方で山頂の白樺は落葉して幹だけになってしまっているようだ。やはり根性なしの樹種なんだなぁ(笑)




などと思っているうちに、時計をみるともう午後3時を過ぎていた。日没まではあと2時間少々。このタイミングで山頂まで往復するのは厳しい。ひとまず本日のところはタイムアップと判断して撤退しよう。

総合的には、いつもの 「見頃」 の状態には至らないフライング気味の景色ばかりであったけれども、秋の戸羽口の状況が掴めたのは良し。これはこれで面白い事例になった。

そのような次第で、今回はここまでとしたい。

<完>




 

■ あとがき


いつもの年なら茶臼岳を狙っている筈の紅葉レポートですが、今回は敢えてBプランと称して別のルートを辿ってみました。それも楓の赤が立ち上がるより早い時期の、雑木の紅葉を拾ってみようという趣向ののんびりドライブです。結果的に、絵になるような冴えた色にはなかなか出会わなかった訳ですが、秋の戸羽口としての 「こんなふうに紅葉の季節は始まっていくのだな」 という風情は感じられたように思います。




なかでも桜の紅葉を久方ぶりに真面目(?)に見たのが筆者にとっては新鮮でした。楓ほどの派手さはないものの 「色づきはそう悪くないじゃん」 という感じで、こういう切り口で眺める秋があっても良いでしょう。




余談になりますが、こういう100点満点を敢えて狙わないという選択をしたことで、筆者はこの日、混雑とはまったく無縁の小旅行を堪能しました。

インターネットのおかげで誰もがジャストインタイム的な恩恵を受けることが可能になり、それを当然のように要求する風潮が広まっている昨今ですが、おかげで有限の観光資源を奪い合って殺人的な競争が起きているのが今という時代の一側面です。

その勝敗レートは暇もお金もたっぷり持て余している定年退職組の老人世代(別に敵視している訳じゃありませんがw)に圧倒的に有利で、仕事に束縛される現役世代に特等席は回ってきません。この傾向は今後も続くことでしょう。




でもほんの少し条件をずらして、100点満点ではなく例えば50点で構わないという選択をすれば、実は行動の自由も選択肢も格段に増えるのです。レッドオーシャンで食い合いながら疲弊するよりも、そちらのほうが実はゆとりがあって豊かな旅になるのかもしれない。今回はそんな思考に基づいて、敢えてプランBを試してみたという次第です。

とはいえ、正直なところ少々ストライクゾーンを外しすぎた(?)感もありますので(笑)、次回は50点ではなく60~70点くらいでイイカンジの選択が出来ればなぁ……などと思っております。まあ、ナニゴトもトライ&エラーの繰り返しということで、はい♪


<おしまい>