写真紀行のすゝめ:撮り方とか
実は結構必要な 「説明写真」
さて今回は、技術論ではなくいわゆる 「説明写真」 について書いてみようと思います。ここでいう説明写真とは、 「そこがどんな場所なのか」 を伝えるための写真、という程度の意味合いです。
説明写真は家電製品の取説イラストのように状況が分かりやすく伝わればよく、芸術性はあまり問いません。写真紀行には 「美しい一枚写真が必要だ」 と思う人が多いかもしれませんが、実際に書いてみると圧倒的に必要なのは説明写真のほうです。そんなわけで少しばかり事例を交えながら書いてみようと思います。
事例:公園で紫陽花を見る小紀行
たとえば、梅雨の時期になって近所の公園で紫陽花(アジサイ)の花を撮ったとします。まあこれ↑もあまり芸術点の望めるカットではないのですが(^^;)、まあそこはそれとして、一応この写真が紀行のメインディッシュであると仮定します。このときの撮影は割と近所の東那須野公園でしたので、「東那須野公園で紫陽花が咲いたよーん」 などという感じのタイトルにしましょうか。
…しかしこのメインディッシュだけでは、気の効いたレポートにはなりません。
この写真には、その公園で撮った、ということが分かる情報が何もないからです。その公園がどこにあって、どんな性格の場所で、紫陽花は多いのか少ないのか、これだけでは何もわかりません。
…それを補足し、状況を説明するために敢えて雑記のように撮るのが 「説明写真」 です。
たとえば、公園内の自然石で作られた休憩スペースをややロングで撮ると、ここが小高い山の上にあって周囲の田園を見下ろすような位置にあり、紫陽花はそんな公園内に植えられていることが分かります。文字だけで説明することも可能な情報ではありますが、写真で示すことでより状況が伝わりやすくなります。ここでは芸術性よりも、そちらのほうが重要です。
また紫陽花は 「群」 として眺めるのが美しい花でもありますので、通路沿いにどんなふうに並んでいるのか写真を沿えるとより状況が伝わります。
さらに公園のマップを示して、紫陽花が植えられているのが朝日のあたる東側の斜面であること、そしてこれが平成の大合併により那須塩原市になる以前、黒磯市時代の末期に地元の小学生らによって植えられたものであること、そしてその黒磯市の "市の花" が紫陽花であったことを紹介すれば、なぜここに大量の紫陽花が植えられているのかを理解してもらうことができるでしょう。
実はここは旧・黒磯市が平成の大合併前に最後に整備した公園で、ここに咲く紫陽花は、ここがかつて黒磯市であったことを示す最後のモニュメントとなっているのです。もう黒磯市という自治体は存在しないけれど、ここではまた今年も青い花が咲いているわけで、これはもうドラマな訳ですよ。
そこに公園に至るまでの道筋とか、当日は小雨模様の曇天であったことなどを加えると、写真紀行としてそれなりにまとまった一節になるはずです。当日の天気なんてどうでもいいじゃん、という意見もあるかもしれませんが、意外とそうでもありませんで、こういうローカルな情報はレポートにリアリティを与えます。
こういった周辺事情を写真とともに綴り、最後に紫陽花のアップの写真に至れば、何の説明もなしにいきなり写真だけ見せられるよりもより感慨深い味わいがあると思うのです。
…ということで、写真紀行というのは実際には説明写真のオンパレードです。気合を入れた "渾身の一枚" ばかりが素材になるとは限らず、案外移動中のつまらない(?)ショットのほうが状況をうまく説明してくれたりします。面白いものですね♪