写真紀行のすゝめ:撮り方とか


AFについていろいろ


今回はAF(オートフォーカス)について書いてみようと思います。…といっても正直なところ、内容が無い割に非常~に書きにくい(笑) なぜかというと用語の解説から入らないといけないのでスペック厨みたいな書き方になってしまうんですね。…でもまあ、セオリーどおりに書いてみましょう。




AFの検出方式


デジカメのAFは位相差検出方式とコントラスト検出方式が主流です。 名称の頭にTTLという略語が付くことがありますがこれはレンズ透過式(through the lens)のことで、いまどきのカメラはほとんどがTTLですからあまり気にしなくて良いでしょう。概略は以下のようなものです。

【位相差検出方式】
デジ一眼のAFは位相差検出式が主流です。撮像素子の手前でミラーでAFセンサに光を分岐して像を結ばせるもので、このときセパレータレンズで像を2分してラインセンサ上に導き、その結像位置のズレ量を検出しています。この方法の利点はピントがずれていた場合に "どちらに、どのくらい振ればフォーカスできるか" が分かるところで、フォーカス速度と精度が高く、さらに動体予測がしやすい=追従性が良い方式とされています。

ただしフォーカス判定できるのは(当たり前ですが)センサのある位置だけで、画面上のあらゆる位置のフォーカスを確認したい場合はそのポイントにいちいちセンサを作り込まねばなりません。カタログスペックで "AFポイント○点" と言っているのがその数で、少ない機種は5点くらい、多い機種だと50点以上のものがあります。動作は 「シュッ…、ピピッ!」 といった感じです。

【コントラスト検出方式】
コンパクトデジカメに多く搭載されている方式です。特別なセンサは搭載せず、撮像素子(CCD/CMOS)で捉えた画像データをそのまま使ってフォーカス判定を行ないます。ピントがずれてボケた画像はコントラスト(明暗比)が悪くなるので、フォーカスレンズを繰り出しながら小刻みに画像取り込み繰り返し、最もコントラストの高くなるところを探してピント位置を決めています。専用センサが不要なのでカメラ本体を小さく、安く作ることが出来ます。

しかしこの方式は原理的にどの程度、どちら側にレンズを繰り出せばフォーカスが合うかという予測が出来ません。そのためレンズを大きく往復させてシラミ潰しにコントラスト評価を繰り返す必要があり、AFとしての反応性は遅くなります。また一旦ピントが外れると再度レンズの往復動作が必要で、動体を追いかけるのが難しく、シャッターチャンスには弱いAFといえます。動作は 「ウィーン、ウィーン…(考え中)…ピピッ!」 とった感じになります。

※デジ一眼でもミラーアップして動画を撮影しているときにはコントラストAFに切り替わります。また最近では撮像素子の画素の一部を潰してフォーカスセンサを作り込むハイブリッドセンサも出てきました。…が、面倒なのでそのへんは割愛します(^^;)




フォーカスモード


検出方式の他に、AFにはどのように被写体を追いかけるかという設定があります。いわゆるフォーカスモードで、デジ一眼ではボディにC/S/Mなどの表記で切り替えスイッチがある筈です。C は AF-C、S は AF-S、Mは Manual を示します。(機種によって多少表記は異なります)

【AF-S (S=シングルの意)】
いわゆるシングルサーボです。シャッターを半押しにするとその瞬間にAFがかかり、そのまま押し込むとシャッターが切れるものです。シャッターを半押しにしている間は最初に合ったフォーカスを維持し続ける (…というよりそれ以上サーボしない) ので、目的の被写体にフォーカスしたのちに構図をあれこれ検討することができます。風景や静物、あまり激しく動いていない人物などはこのモードで撮るのが一般的です。

【AF-C (C=コンティニュアスの意)】
こちらは連続サーボで、シャッターを半押しにしている間はずっとAFがかかり続け、被写体を追いかけて連動します。スポーツシーンや動物(鳥など)、走行中の自動車や鉄道列車などを撮るのに適しています。AFサーボ中はレンズモーターを動かし続けるので常用しているとバッテリーの消費は早くなります。

【Manual】
これは説明の必要はありませんね。自分の目で被写体を見ながら手動でフォーカスを合わせる方式です。視力に自信がある人向けです。

…で、「とりあえずカメラを買ったばかりなんだが、どれを使えばいいの?」 という人は、風景主体ならとりあえず AF-S で良いと思います。筆者もほとんどAF-Sのままです。子供の運動会など明らかに被写体が動き回ることが分かっているときは AF-C で追いかけるのが良いでしょう。




実は人間のやることはあまり無かったり(^^;)


さてそんな訳で実戦ではどうよ、という話になるのですが…AFについては人間が関与することというのは実はあまりありません。フォーカスエリアの選択と、不具合時の対応くらいでしょうか。筆者はAFポイントは殆ど中央しか使わないので撮り方も原始的です。中央のフォーカスポイントをピンを合わせたい対象物に向けてシャッターを半押しし、そのままの状態で構図をあれこれ定めて押し切る…これだけ(笑)

下手に51点フォーカス(D300の場合)を使わないのは、込み入った風景を撮ろうとした場合にカメラが勝手にフォーカスポイントを選択してしまって (→これを便利だと言う人がいるので多点化がインフレ気味になったりする訳ですが) 意図したところにピンが行かないことがあるためです。さらに多点AFでは平面風景(ひたすら田園とか牧草地とかが広がっている)を俯瞰して撮ろうとするとかなり手前側を拾おうとする傾向があって、それが 「もう少し遠景側に寄せてよ」 という筆者の好みに合わないというのもあります。手前側を優先するのはモデル撮影会の時などでは便利かもしれませんが、筆者のように風景ばかり撮っている人間には 「余計なことはしてくれるな」 でバッサリな訳です。

この点、鳥撮をしているような人や "鉄" な人は多少意見が異なるかもしれません。動きのある被写体を追う人にとって多点AFは福音です。なにしろ位相差AFはセンサのある位置でしかフォーカスを評価しませんから、画面上をちょこまかと動き回る被写体を追うには、AFセンサがたくさん配置してあって被写体がひょいと動いたらいずれかのセンサで引っ掛けられるほうが望ましいのです。

多点AFには一度フォーカスロックした被写体を追いかけていく機能(Nikon機では3Dトラッキング)があって、スポーツなどでは特定の選手を狙って写真を撮ることが出来ます。鳥などもあまり小型のものはファインダーに捉えることそのものが難しいですが、大型の鴫(シギ)や鷹、鴎(カモメ)などであればファインダーで捉えることが出来(→ここまではカメラマンの運動神経 ^^;)、画面内での補足はAFに任せることができます。(作例のカモメはかなりヌルい題材ですw)




決まらない時は?


ところでAFには挙動不審のトラブルがよく起きます。暗い場所や濃霧などでコントラストの弱い状況(右図参照)になると、フォーカスを拾えなくなる場合が結構あります。それも "ド外れ" するのではなく、ちゃんとサーボがかかってそれなりにピンが来ているのに完了フラグが立たず固まってしまうケースによく遭遇します。

Nikon機ではAF-Sでこの傾向が強く出ます。今どきのカメラはAF が決まらないと(=内部的にAFが決まった、というフラグが立たないと)シャッターが切れないので、この場合はAFが足かせになって写真が撮れないということになります。

それ以外にもAF-Sは意外なところでピントを拾ってくれなくなる場合があります。一面の花畑とか格子戸のような細かい繰り返しパターンに弱かったり、明暗差の強いところ、のっぺりした背景に同系色の服を着た頭髪の寂しい人物が立っている場合、また雪や雨の降っている遠景なども苦手です。明るい晴天の風景でもダメなときは本当に 「なんで?」 というくらい決まらないときがあります。

※こう書くと Nikon機の悪口ばかりになりそうですが、これは別にメーカーに恨みがある訳ではなく筆者が所有しているのがNikon機だから現象が確認しやすいだけです(^^;)




具体例を示すとこんな↑風景でAF-Sはフォーカスを拾わなくなります(特に1点AFの場合)。これは細かい樹木の並びが一面に広がっている "繰り返しパターン" に相当します。

カメラの性能に過剰な期待をしている初心者の方などはシャッターが切れなくなって慌てるかもしれませんが、慣れてくるとAFの信頼性の程度も分かってきて 「…ああ、またか( ̄▽ ̄;)」 と動じなくなります。(→人によってはこれを "悟りを開く" などと言いますw)




こんなときは、距離感の近いところにあるコントラスト(明暗差、色段差)のある部分を狙ってAFに拾わせるようにします。そしてシャッター半押し(=フォーカスロック)したまま撮りたい構図に持っていって、気に入ったところでシャッターボタンを押し込めば良いのです。

※なお人によってはこの構図を振る部分で 「コサイン誤差が問題だ」 と言い出す人がいますが、一般風景の撮影ではあまり気にしなくて大丈夫です。コサイン誤差を気にする人の多くは鉄道写真を撮る人で、超望遠(→被写界深度が浅い)で奥行きのある列車を手前から狙うことが多いのでピントにシビアになるのです。鉄な人はカメラのAFをあまり当てにせず、いまだに置きピン(あらかじめ撮影ポイントを決めてそこにピントを固定しておき、列車が差し掛かったところでシャッターレリーズする)推奨の人もいるくらいで、ちょっと独特の世界があります。




レリーズ優先で逃げる手もある


ところで霧の風景などコントラストのある部分を見つけにくい場合にAFが効かなくなったらどうすれば良いでしょう。…この場合は、もちろんマニュアルフォーカスで撮影しても良いのですが、AFの設定を変えることでよりヌルい対応をすることができます。

1) AF動作の優先順位を変更する

よほど安っぽい機種でない限り、AF設定には フォーカス優先、レリーズ(シャッターボタン)優先を切り替えるスイッチがあります。標準的に最も良く使われるシングル動作のAF-Sは初期設定ではフォーカス優先になっていて、フォーカスが決まらないとシャッターが切れません。これをレリーズ優先に変更すれば、フォーカス駆動が完了しない状況でもシャッターボタンを押し込めば撮影できるようになります。

Nikon機では大抵の場合AF-S(初期設定=フォーカス優先)はそれなりにサーボがかかってフォーカスをいい具合のところまで合わせ、最後のOK判定が出ないまま考え込んで止まることが多いです。これをレリーズ優先にすると 「さっさと決めろよ、ゴルァ!」 とケツを蹴り飛ばして(?)シャッターを開かせることが出来ます。こういう撮り方をすると理屈のうえではピンボケになる可能性が上がるはずですが、撮影実績を見ると結構イケていて、筆者が見る限り失敗写真はほとんどありません。面倒なことを考えたくないなら普段からレリーズ優先の状態でも良さそうな気がします。

2) AF-Cに切り替える

別解としてAF-Cも結構使えます。AF-Cはもともと動体向けのモードで、スポーツ写真など "多少ピンが甘くても決定的瞬間を逃したくない" 用途向けに初期設定がシャッター優先に設定されています。AF-Sでフォーカスが決まらないときは、こちらに切り替えて撮影しても良い訳です。(カメラの基本設定をあまり変えたくない人向け…といえるかもしれませんね)

AF-Sでレリーズ優先にした場合との違いは、シャッターボタンを半押しにしている間はずっとフォーカスを追い続けている点です。手前や奥に木の枝が多いような込み入った風景だとフレーミングを変えたときにピンに "浮気性" が出たりしますが、まあそこはそれ(^^;) あまりカスタムメニューで設定をいじりたくない人は、AF-SとAF-Cを切り替えるだけでも 「写真が撮れない」 トラブルからかなり開放されますのでお勧めです。


…ということで、長くなってきたのでこの辺で(´・ω・`)ノ