2010.04.30 東野鉄道の廃線跡を訪ねる:前編(その2)
■ぽっぽ通りを行く
西那須野駅の東野鉄道ホーム跡から線路の痕跡を辿るのは比較的簡単である。線路の跡地は道路に転用されているためだ。愛称として "ぽっぽ通り" という名がついており、大田原市街地までの区間は明瞭にルートが残されている。
これは旧R400(2009年に新R400が開通して名称が変わっている)付近の商店街地図。矢印を書き込んである部分が "ぽっぽ通り" で、鉄道路線の特徴的な痕跡としてのゆるやかなカーブがみえる。
自動車と異なって車列の長い鉄道列車は(当たり前の話ではあるが)急なカーブは曲がれない。鉄道が廃線になるとその線路跡は道路に転用されることが多いようだが、地図をみるとこのように線路特有のRの緩いカーブが散見されるので、区画整理などに遭わない限り比較的ルートは追いやすいように思う。
旧・R400を超えてぽっぽ通りの標識を過ぎると、線路跡は住宅街の中を抜けていく。
ただしクルマで走れるのは最初の500mだけで、そこから先は歩行者/自転車の専用区間になってしまう。MTB乗りなら爽やかにここを走り抜けられるのだが、筆者は四駆乗りなので併走する旧R400からちょこちょこと首を突っ込んで状況を探りながら進むこととしよう。
そんな次第で西那須野駅から1.3kmの南郷屋付近である。ここは鉄道現役時代の踏切跡で、画面中央にみえる黄色いストライプの部分が線路だった部分だ。
ストライプ上から鉄道跡=ぽっぽ通りを西那須野方面に向かって見てみると、このような状況である。すっかりサイクリングロード然としてしまっているが、住宅街を抜ける線路跡だと言われれば確かにそう見えてくる。
こちらは180度反転して大田原方面を向いたところ。それにしても、タイルを敷くのであれば線路パターンで整備して欲しかったなぁ…と思わずにはいられない(^^;)
ここから先は雑木林と水田の点在する田園風景になっていく。写真中央を左右に走っているのがぽっぽ通りだ。
この季節…蒸気機関車がここを通り抜けていたら、実に郷愁溢れるいい写真が撮れただろう。風景的には非常に惜しい気がする(´・ω・`)
■乃木神社付近
やがてぽっぽ通りは乃木神社参道と交差する。これは交差地点から西那須野方面を見たところ。奥に蒸気機関車をモチーフにしたオブジェが見えている。ぽっぽ通りにはこの種のオブジェがあちこちに散在している。芸術性についてはよくわからないが(^^;)雰囲気を盛り上げようという意図は読み取れ、それなりに鉄道の記憶を保持しようという市当局の姿勢が伝わってくる。
この付近は "乃木緑地" と呼ばれる小公園になっており、桜はもう殆んど終わってしまったが、楓がいい感じで花をつけていた。
緑地には乃木神社前の駅を復元したモニュメントが残っている。実際の駅位置からは50mほどズレており、あくまでもイメージを残しているだけなので "史跡" というほどのものではないようだが当時の雰囲気を感じることはできる。
再現されたホームは現在のJR線のものより低めに作られていた。古い写真資料を見ると (あくまでも目測になるが) 実物もこの程度の高さだったようだ。現役当時はこの低いホームからステップを踏んで列車に乗ったのだろう。
それにしても…鉄道の記憶を持たない筆者のような世代からすると、こうして見知った地名が駅標になっているのは少々不思議な気分だ(^^;)
一通り終点までチェックして思い返してみると、おそらく沿線の駅跡で最も現役時代の雰囲気を残しているのがこの乃木神社前駅のように思われた。
ここは東野鉄道の歴史の中では利用者が少なかったことから途中で廃止(昭和14年)されてしまった不遇の駅なのだけれど、他の主要拠点駅が大型店舗等になってしまったのと比較すると、そこそこのマイナー度で再開発から取り残されたことが幸いしてこのような状況に至ったらしい。
産業史跡ではよくあることだが、かつて最も賑わったところが最もよく保存されるわけではない…ということの典型といえるかもしれないな。
乃木神社を過ぎると、ふたたびぽっぽ通り=東野鉄道軌道跡は田園風景の中を抜けていく。この付近は現在では桜並木になっており、満開の時期にサイクリングで通るには良いコースだろう。
ちなみに東野鉄道とほぼ平行して走る旧R400の風景はこのような状況である。こちらは西那須野、大田原という比較的近接した都市部に挟まれて住宅街に埋もれつつある。美観的には特にこれといって特別な特徴はない。
…が、通りからほんの数十メートルほど東野鉄道側に入り込むと、こんな風景が広がっていたりする。
クルマで走っているとなかなか気がつかないのだが、幹線道路沿いのハリボテ構造(^^;)に唖然とする瞬間でもあり、まだまだこの辺りも捨てたもんじゃないぞ感(なんだそりゃ)を感じるところでもある。
東野鉄道跡は、こんな風景の中をさらに東へと続いていく。
<つづく>
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