写真紀行のすゝめ:ハードとか
コンデジ/一眼レフ/ミラーレスの相違
前節ではデジ一眼を思い切りPUSHしてみました。では何が違うのさ…というのが今回のお話です。昨今はコンデジはほぼ絶滅、デジ一眼もミラーレス一眼へとゆるやかに移り変わっていますが、ここでも難しい話は置いておいてざっくりと様子を眺めてみましょう。
かなり大雑把な比較
さて過去3~4年(2020~2024年)ほどを眺めて標準的と思われる製品を一覧にしてみました。なおここでいうコンデジとはポケットサイズの機種を想定しています。
コンデジはスマホカメラによって代替されて生産中止となった機種が多く、従来のカメラメーカーはほぼ撤退、そこにケンコーなどのサードパーティや中華メーカーが安価な機種を提供して2018~2020年頃を境にシェア構成が大幅に変動しています。表中では絶滅とか書いていますけど(笑)、まだ命脈は保っています。
その上のクラスとしてはデジ一眼レフとミラーレスということになりますが、現在はミラーレス機の勢いが強く、デジ一眼レフは市場から退場しつつあるというのが趨勢です。ちなみにミラーレス機もデジ一眼の範疇で、光学系内にレフレックスミラーがあるかどうかが最大の違いとなります。
◆コンデジは作りが安上がり
コンデジはとにかく安上がりにつくられています。レンズはプラスチックモールドで小さく作り込み、絞りは最初から固定(というか絞りという名の部品が無い)、明るさの調整はNDフィルタの挿入で2段階のみと大胆に省略し、AFセンサやシャッターメカすら搭載せず、光学系が簡素なぶん信号処理側に頼った絵作りをしています。信号処理の技術が最近は長足の進歩を遂げているので、安価な割にはなかなか良い画質を提供してくれるようになっていますが、デジ一眼やミラーレスには敵(かな)いません。(スマホのカメラはこれをさらに簡略化したものになります)
コンデジは軽くて小さいので携帯性に優れ、価格も一眼レフやミラーレスに比べると安いので気軽に使えます。ただしこれで本格的な写真紀行を書こうとすると、ちょっと条件の厳しい場面ではすぐに感度の限界でシャッターが切れなかったりバッテリー切れで泣くケースが増えます。明暗の極端な場所の撮影には不向きと思ったほうが良いでしょう。
コンデジならではの活躍の場としては、食べログなどの料理物や小物のアップなど、いわゆる接写系(マクロ)のシーンが向いています。もともと接写につよい作りになっているので、食事のメニューを撮る際にわざわざ立ち上がったり後ろに下がらなくてもよく、悪目立ち(笑)しないで済む利点があります。
◆急進するミラーレスカメラ
ここ最近勢力を増しているカメラにミラーレス一眼があります。ミラーレスとは読んで字の如く、従来の一眼レフからレフレックスミラーを取り除いて光学系をコンパクトにしたカメラです。ミラーを無くしたことでファインダーから光学的に撮影構図を確認することはできなくなったのですが、撮像センサーの映像をモニターに映せば同じような物でしょう、ということでカメラ全体の軽薄短小化を優先した製品になります。撮像センサは一眼レフと同等、画質もほぼ同じです。
これが今、カメラ市場で急激にシェアを伸ばしています。下表は2024年9月の月間BNCランキングですが、一眼カメラの売れ行き上位50件のうち48件がミラーレスで、なんと集計の96%という占有率になっています。
一眼レフからミラーレスへの転換が進んでいるのは、ミラーを無くして光学系をコンパクトにすることで、一眼レフ並みの画質を維持しながら小型軽量のカメラが作れるようになったためです。
ただしこれにはトレードオフがあり、従来はミラーを経由してファインダーで被写体を見ていたものが、撮像センサ経由でモニターに像を表示するようになったので電力消費が格段に増えています。おかげでバッテリーを充電して撮影できる画像の枚数が減ってしまい、街撮りの 「ちょいスナップ」 程度なら良いのですが、本格的な撮影旅行に行く場合には予備バッテリーを潤沢に用意する必要を生じます。
2024年9月頃に市場に出回っている製品を見ますと、撮影枚数は満充電で300~500枚くらいに相場があるようで、コンパクトな機種ではコンデジ並み、スタミナのある機種はボディもバッテリも大き目の印象があります。
◆デジ一眼レフは画質もさることながら、スタミナが素晴らしい
さてミラーレスにお株を奪われつつあるデジ一眼レフ機はどうかといいますと、撮像素子が大きくて1画素あたりの受光面積が大きい上に、レンズも大きくて十分な光量を確保できるため画質は非常に安定しています。そしてそれ以上に、先に述べたようにバッテリーの持ちが驚異的に良いという利点があります。
筆者の手持ちの機種でいうと Nikon D750、D780 のスタミナは特に素晴らしく、1回の充電で約2000枚以上の撮影が出来ます。一日1000回以上シャッターを切るというのは結構なハイペースだと思いますけれども、そのくらい撮りまくっても電池の交換が不要と分かっていれば、山でも川でも離島でも安心して深入りできます。旅写真では、これが本当にありがたい。 筆者がいまだにミラーレスに食指を伸ばさない理由は、ほぼこの一点です。
この特性が非常に役に立つのが、車窓写真を撮るときです。
車窓から眺める風景は旅の醍醐味のひとつ。しかしコンデジやミラーレスでこれを撮ろうとすると、うまくいきません。電線や樹木、看板など視界を遮るものが次々と流れ去っていくなか、ジャストタイミングを狙うにはひたすらチャンスを待つ必要がありますが、無駄なライブビューを延々と続けるうちに電池を消耗してしまうからです。
これがデジ一眼なら低消費電力のままファインダーの光学像を覗いていれば良く、電池切れを心配する必要はほとんどありません。運悪く電源を落としているときに不意に 「おっ♪」 と思う風景がみえても、起動は0.2秒未満で完了するので即応できます。このようにシャッターチャンスに滅法強くなるのが、デジタル一眼レフなのです。