写真紀行のすゝめ:ハードとか


補足:コンデジを分解してみたら


さて今回は補足的に、コンデジを分解してみたら中身がどうなっていたかをレポートしてみたいと思います。前回の記事で 「コンデジには絞りがない」 「シャッターもない」 などと書きましたが、本当のところはどうなのか実物検証をしてみようという趣向です。対象機種は Nikon S8000 で、実はこのカメラはこの後の記事でも結構な活躍をしているのですが、不幸にして寿命を迎えてしまったのでバラしてみたものです。

なお本稿がこの順番で記事リストに並んでいるのは、内容的にコンデジの構造について説明した直後に配置したほうが読みやすいだろうという考えに基づくものです。 時系列純にはなっていませんが、まあそこはそれということでご理解願います。




さてではバラしてみよう


そんな訳で面倒な前振りは省略して、さっそく解体してみましょう。




まずは仏様の全体像から。このカメラの死因は起動時にレンズエラーが多発して使えなくなってしまったというもので、外観上は特に損傷がある訳ではありません。余命の尽きる間際には空手チョップで起動させていたりしたので 「お疲れさん」 の一言くらいは贈って差し上げましょう。

※ちなみにレンズエラーはコンデジ死亡時の典型的な症状です。低トルクで駆動するレンズユニットのイニシャル動作が完了できなくなるもので、落下によるメカの歪みとかゴミの侵入、グリス枯れ、リミットセンサの劣化、あるいは水の侵入で基盤がショートするなど、原因は様々です。




さて最初は裏面パネルを外してスイッチ部と液晶をバラシます。この部分はモジュールの独立性があるので薄ハーネスでちょこんとつながっているだけ。これはなかなかスマートな設計といえましょう♪




ステンレスの保護板を外すと、結構な高密度実装の中身が現れます。コストダウンのためかテープで止めただけ…の箇所が結構多めで、これはちょっとダサいかも…w




テープ(保護用も兼ねているのかな?)を剥がすと、CMOSモジュールが現れました。いわゆる撮像素子です。昔はCCDが多かったのですが、現在では省電力性に優れたCMOSセンサが主流になっています。




CMOSセンサを外すとこんな感じです。ここに光が当たって "像" として捉えられるわけですね。この機種はセンサのサイズが1/2.3インチですが、実際に指先に載せてみると 「こんなに小さいのか…!」 と驚きます。




参考までに顕微鏡で拡大してみました。写真(↑)はピントを拾いやすいワイヤボンドの部分で、写真下半分の虹色に見えている部分が画素の一粒一粒の集合体です。虹色は可視光線の干渉縞によるもので、音楽CDなどが虹色にみえるのと同じ理屈によります。残念ながら手持ちの機材では倍率が足りなくて、画素単位のRGB市松模様までは見えませんでした……




さて撮像素子を外した光学系側はこんな感じです。いきなりレンズが見えていますね。……ということは、つまりシャッターがありません。撮像素子にはレンズを通した光が常時当たっていて、それを電気的に読み取る時間を変化させて "電子シャッター" と称しているのです。部品点数を減らして安く作る工夫の一端がここに見えています。




レンズモジュールを外してみました。3段鏡筒はハメ込み式で組み立て られているようで、ビスを外せば分解できるようなものではなさそうでした。うむむ。




それでもなかば無理やり外してみると、光学部品のOFF/ON構造が現れました。光軸上に部品が横から出入りするのはここだけで、どうやらこれが明るさ調整用のNDフィルタのようです。




光学系の中央付近には、一眼レフであれば絞りがある筈なのですが、いわゆる虹彩絞りの構造はありません。この機種では、この丸い穴の開いた板が固定絞りを兼ねているようです。




ちなみにコンデジでも撮影時には画面上に 「F**」 などとF値が表示されます。しかし既に御覧のように実際には可変絞り機構は無いので、F値は単に "明るさの指標" でしかありません。コンデジと一眼レフの光学系の最大の相違はここで、ゆえにコンデジではF値が最大になったからといって一眼レフでいうところの絞り解放にはならず、背景ボケの変化も起こらないのです。

※コンデジでも高級機種では絞り可変機構を積んで一眼レフと似た挙動を示す機種もあります。




そんなわけで、きもちよくバラバラになってくれたかつての愛機。 シンプルで安あがりな構造にしつつも創意工夫がいろいろ盛り込まれており、設計者のエンジニア魂を感じさせてくれる一品でした。今回は諸般の事情があって寿命を迎えてしまった訳ですが、願わくばその魂の安らかならんことを・・・南無南無。

…ということで、今回はここまでです♪