写真紀行のすゝめ:撮り方とか
紅葉はマイナス補正、黄葉はプラス補正
今回も性懲りも無く露出補正の話です(笑) カメラの適正露出の設定が反射率18%のグレーを基準に行われていることは既にご紹介したとおりですが、すべての色をグレーで代表するというのにはやはり少々無理があるようで、極端に色が偏った場合にはカメラの判定する適正露出が外れる場合があります。特に弱いのが赤色で、真っ赤に染まった紅葉とか、やはり赤色の美しいヤマツツジなどを撮ると、写真が明るくなりすぎる場合があります (→この状態を赤色が飽和する、などと言います)。これを露出補正でなんとかする…というのが、フィルム時代からの伝統的なカメラマンの作法(?)になっています。
カメラは鮮やかな赤色が苦手
前振りはそのくらいにして、実物を見てみましょう。これ↑が赤飽和を起した写真の実例です。一見、綺麗な紅葉にみえるかも知れませんが赤色がベッタリした感じに潰れていて、葉と葉の境界が分からなくなっています。露出補正はかけていません。
この絵のRGB(赤/緑/青=光の3原色)各チャンネルのヒストグラム↑をみると、赤のチャンネルだけが明るい方に飛んでいることが分かります。全体が赤い被写体を撮っているので赤の成分が強くなるのは当たり前なのですが、ヒストグラムの右端で濃淡情報がスパっと無くなって、微妙なディティールが潰れてしまっている訳です。カメラのオート露出では機種を問わず多かれ少なかれこの傾向があります。
そこで意図的にマイナス補正を行って赤が飽和しないようにするのですが…これが結構、加減が難しい(笑)
上の事例は-1段で撮ったのもので、確かに飽和は無いのですが何だか少々渋い色調になってしまいました。
そこで露出補正を -0.7段に抑えて、少し飛ばし気味なんだけれどディティールは残っているぞ、というあたりを狙ってみたのがこれ↑です。このくらいだと、そこそこ赤みも出てイイカンジでしょうかね。もっと赤くしたい場合はさらに補正をかければ鮮やかさが出てきます。
ここでは主に赤色チャンネルのヒストグラムを見ながら調整をしていますが、「ここがベスト」 という基準は実はありません。一般人の求める紅葉の写真というのは実物以上に赤いものが好まれる現実があります。カメラの補正メニューには彩度を強調する "VIVID" なんてのもありますし、赤が飽和しているくらいの写真の方が実はちょうどよいのかもしれません。
黄葉はプラス補正
さて一方、極端に黄色に偏った風景の場合はカメラのオート露出ではアンダー気味の絵になるのでプラス補正で撮るのがよく行われるそうです。「そうです」 というのは筆者自身は意識して補正したことが無いので…(爆) まあそれはともかく実例を見てみましょう。
とりあえず黄色いっぱいのサンプル画像を用意してみます。これはとある仏寺の銀杏(いちょう)です。補正はかけていません。
この画像のRGB各チャンネルのヒストグラムをみてみるとこんな↑感じになります。黄色はRGBに分解すると R(赤) と G(緑) の合成になります。使っているソフトのバージョンが上がって表記がレッド、グリーン、ブルーになっていますがそこは無視してください(笑)
全体傾向をみると赤が若干飛び気味ですがそこそこのバランスで収まっているように見えます。筆者があまり黄色の補正を意識しないのは、おそらくこの "そこそこのバランスで写る" ことに依るのでしょう。
これを +0.67段(画面ではEVと書いてありますが段=EVです)プラス気味に補正して撮ると、黄色が鮮やかになりました。たしかにプラス補正は効いているようです。
この時のヒストグラムはこんな↑感じです。赤、緑のコントラストの山が消えない程度のプラス補正ならそれなりの諧調を維持しながら明るく撮ることができそうです。…とは言っても、赤はやはり早めに飽和し初めて、緑のチャンネルで諧調を維持しているような格好になっていますね。プラス補正にすると黄色は確かに鮮やかになりますが、パラメータの振り幅にはあまりマージンが無さそうな印象です。
では混在したらどうなる?
さてそれでは赤と黄色が混在したらどうなるでしょう?
この場合は、もう三現主義で行くしかありません。三現主義とは工場の改善活動などで使われる用語で、理想論や完全主義を廃して現場、現物、現実に合わせることを言います。何を優先するべきかを撮影者が決めて、そこに合わせて補正のレベルを決めるのです。これはもうカメラマンの思想とか好みの領域なので他人がとやかく言う範疇ではありません。
ただそうは言っても達人の領域に達していない一般人には 「どないせいちゅーねん…(´・ω・`)」 と言いたくなるのも事実ですので、筆者の感想的なものをいくらか書いておこうかと思います。(…そういう筆者も修行中の身ではありますが、まあそこはそれ ^^;)
【黄色よりは赤を優先すべし】
これはあくまでも感覚的なものです。黄色は補正に対して反応が鈍いように筆者は感じますので、経験的に赤を基準に補正レベルを決めることが多いです。実のところそれで大抵のシーンは間に合ってしまいます。
これ(↑)は赤を基準に -1.0段の補正で撮ったものです。楓の赤色がトビを起こさないことを優先したものですが、背後にある黄色がそれで台無しになったかというとそうでもありません。
こちら(↑)は赤はほとんどなくて黄色主体になりますが(笑)、補正値は赤を飛ばさないようにやはり -1.0[EV] でかけています。日陰なので若干黄色が暗めの色調になっているものの、それでも鮮やかさは損なわれていません。
そのような次第で、なんとなく赤はマイナス、黄色はプラスにすると良さそう…という原則はあるものの、被写体の状況に応じて最適解がどのあたりにあるのかは様々です。いろいろ試して、美しい秋の景観を最高の思い出に致しましょう ヽ(´ー`)ノ