写真紀行のすゝめ:撮り方とか


ビーチリゾートはプラス補正




前回にひきつづき、露出補正の話です。一眼レフ=いいカメラ=きっといい写真が撮れるに違いない、と思っているとトンでもない目に遇うという事例でもあります。特に海は結構な "鬼門" で、日差しの強い南国のビーチリゾートは実はカメラ泣かせなのですよ。まずは実際の事例を見ていただきましょう。




これ↑は沖縄に行ったときのビーチの写真です。「いったい何が起こったんだ?!」 というくらいに暗い画面になってしまっています。ヒストグラムを見ても、 ダイナミックレンジの高い方1/3くらいが使われていません。これはエライこっちゃです。

実はこれはカメラの露出計が騙(だま)されている結果なのです。この日は強烈な日差しが照り付けていて、空より砂浜のほうが明るいくらいでした。 こういう環境ではカメラのオート露出はアテになりません。必要以上にアンダー気味の補正がかかって写真が どす黒くなってしまいます。この現象に気が付かないでシャッターを切り続けていると、帰宅後に 「ドヒャー!!」 となって悲しみに暮れることになります。

どうしてこういうことが起こるかというと、あらゆる被写体を反射率18%のグレーとして丸め込んで(→業界の規格で決まっている)露出調整するという 基本ルールにそもそも無理があって、カメラが対応できなくなるのです。強烈な直射日光の下では露出計にも強烈な光が入ってくることになります。 カメラはこれを、平均的に18%グレーに近似できる筈の被写体が異常に明るく照明されていると認識して、アンダー気味の補正をかけて撮ろうとします。

これはデジカメに限った話ではなくフィルムカメラでも起こる現象で、カメラマンの世界ではプラス補正で相殺することがほぼ常識となっています。 素人的には「こういう現象はカメラ側の制御を賢くして自動処理してよ」 と言いたくなるところですが、残念ながらカメラが見ているのは露出計の 返してくる電圧だけで、その場所が海なのか山なのか、はたまた近所の公園なのかは判定できません。 カメラによっては 「海山モード」 のようなメニューを用意している場合もありますが万能ではなく、一般的にはビーチ写真はプラス補正して撮るというのが平均的な対応です。




さてこれ(↑)は +3.0 [EV] ほどプラス補正して撮った同じ海岸です。雲が白トビしてディティールが失われるのがイヤだったので若干余裕を残していますけれども、 カリカリに調整しなくてもドス黒いビーチにはなっていません。こんな感じで撮れば海は美しく写真に納まります。

露出計の騙され具合は、天候、時間帯、周辺の照り返し具合の強弱等によって刻々と変わります。 綺麗な砂浜を見つけたら、まず何枚か試し撮りを行ってその場所に合った露出補正の設定をし、それから撮影を始める…という儀式めいた習慣化が必要かもしれませんね。




ちまちまと調整を繰り返して、ほぼレンジいっぱいに撮影すると、超絶的に爽やかな(?)風景になりました。 毎度毎度明暗いっぱいに振り分ける必然性は必ずしもありませんけれども、この風景に限ってはこれで正解のような気がします。フィルム時代と違って現場でヒストグラムが確認できる福音は大きいですね。

カメラの露出補正はデジ一眼であればたいていの機種で ±5 [EV] くらいの幅でできるようになっています(安いコンデジだと±2[EV]くらい)。 初心者のうちは「こんな機能、何に使うんだ?」と思うかもしれませんが、いわゆる写真がうまい人というのはカメラの性能を過信せず、露出計が騙されることを見越してシーンに合わせた調整をマメに行っています。 決してオート調整に任せっぱなしにはしないのです。

…これがマニュアルアシスト無しで一発で撮れるカメラがあれば、素晴らしいのですけれどねぇ(^^;)