2014.05.03 新緑の那須を周遊する:前篇(その2)




■ 長峰公園




大野放牧場を後にしたのちは、大田原の中心市街地を経由して矢板へと向かう。本日のルートでは矢板付近でどうしても野崎街道〜国道4号線(→混雑スポット)を通らねばならないので、"朝のうちに通過してしまえ作戦" で切り抜けていく。




やがて長峰公園に到着。駐車場の埋まり具合は半分くらいだろうか。朝っぱら結構人が来ているのは、観光客というよりも散歩とかジョギングの地元民の方々である。




長峰公園はJR矢板駅に隣接した丘陵地に開けた市民公園である。総面積はおよそ11ヘクタール。ツツジの名所としてよく知られており、筆者が本日ここを訪れたのも実はツツジが目的だったりする(^^;)



ここは鉄道が開通して以降、明治の後半頃に八方ヶ原に自生していたツツジが植林され "ツツジ山" となったのちに、近代公園として整備されたところである。八方ヶ原まで登らなくても鮮やかなツツジの密集が見られることから、まだモータリゼーションが及んでいなかった大正から昭和の初めごろにかけては、駅前徒歩五分という絶妙の立地を生かして行楽地として賑わった。現在でも矢板市民にとっては憩いの場となっている。




…それにしても、公園にいるのはご年配の方ばかりだな。…おい、若いヤツはどうした(笑)




ジョギングや散歩の方々はほとんどが園内通路をぐるぐる周遊しているのでグラウンドは空っぽである。一見するとこういう状況は 「邪魔な人影が写らない」 ので撮影にはちょうど良い……ように見える(^^;)




しかしこの公園のツツジ園は南西を向いた斜面にあるので、実は早朝の時間帯には逆光気味だったのである(爆) …こりゃ参ったな(^^;)




といってもツツジは中央の山以外にも大量の株が植えられているので、順光で撮れるものを探して撮っていこう。この時間帯では散策路の西側寄りの部分がちょうど良い具合に朝日に映えていた。光線の具合さえよければ、葉桜との対比も美しい。




芝桜もイイカンジで満開になっていた。そういえば、ここが満開になっているのは初めてみるなぁ…。



 

■ 逆光条件での撮影をちょっと頑張ってみる




さてここで、せっかくの面白い機会なので逆光条件でツツジの色が出せるか少々試してみた。

桜の撮影でも共通するところがあるけれども、たくさんの花が密集している場合、逆光では影の影響で色調がドス黒く引っ張られやすい。これに打ち勝つにはやや過剰なくらいにプラス補正して加減のよいところを探すのが基本となる。そうすると明るい空などは青色が飛んでしまうことが多いのだが、これはある程度割り切るしかない。




まずは逆光気味の条件で "空の青さを残そう" とした場合(↑)。このショットでは露出補正はかけておらず、空の青は飽和気味だが残っている状態である。しかしこれだとやはり花の色(というか明るさ)が負けてしまう。




空の色を出すのをあきらめて +0.67[ev] でプラス補正してやると、青空は飛んでしまうけれどもドス黒かった赤を持ち上げることができる。ただし加減は難しく、やりすぎるとただでさえ飽和しやすい赤がべったりと潰れてしまうし、黒も締まらなくなってしまう。加減のよい補正のストライクゾーンは案外狭い。




空の明るさに負けないための最も簡単な方法は、そもそも画面に空を入れないことである。ついでに直射日光のあたっている花も避けて、影による明暗差も除けば色トビはなくなる。




…といっても、日陰の花のオンパレードというのもちょっと寂しいものがあるな(笑)




似たような条件でややロング気味に撮ってみたこがこれである。このショットでは露出補正は -1[ev] 。暗いのにさらにマイナス補正?…というツッコミが入りそうだが、画面に占める赤の割合が大きいせいか色飽和が派手に出ている傾向があったのでそれをキャンセルする方向で補正している。


…こうしてみると、明るすぎる背景(逆光の空)が入ってきても、特定の色(この場合は赤)の面積が大きすぎても、露出計は思いっきり引っ張られてブンブン振られていることがわかる(^^;) 結局、誰でも簡単にオート撮影…などというセールストークは嘘っぱちで、やはりマメにちょこまかと小細工してやる必要があるようだ。




ちなみに順光+晴天の条件で青空をバックにすると、背景放射=青空の散乱光の強さと花の表面反射がだいたい同じくらいのレベルになる。こういう条件だとあまり派手な失敗はなさそうだ。やはり順光は王道なのだろうねぇ(^^;)



 

■ 展望台




さてゆるゆると回廊を登っていくと、いかにも庭園然とした感じになってきた。ここは2011年の震災の時には通行止めになっていたところで、もちろん現在では問題なく登れる。



てっぺんまで来ると展望台がある。しかし一見してわかるように、現在では周囲の樹木が伸びすぎてバリケードになってしまい、実質的に展望台になっていない(爆)




…今更ながらではあるけれど、震災復興のときに除染名目で周辺樹木の整理をしてしまえば国から予算も付いて一石二鳥だったのに、矢板市も仕事のセンスが(中略)…いやまあ、いいかw




仕方がないので、展望台下の隙間から見た遠景を一枚(^^;) 山頂の樹木がツツジに影を落としていてこれまたちょっとアレなのだが、本日の長峰ショット(なんだそりゃ)はコレにしておこう。




駐車場に戻ると、ちょうど売店屋台のセットアップが始まるところだった。聞けばGWの連休中はつつじ祭りと称して毎日営業しているという。筆者はてっきり 「祭り」 と聞いて神輿でワッショイ系のものを想像していたのだが、4月のさくら祭りと一緒で基本的に出店が営業しているだけで神様は登場しないらしい。

本日のところは時間の関係で筆者はもう去らねばならないのだが、次回以降はもうすこし良い時間帯に来てタコヤキのひとつも頬張ってみたいところだな。 



 

■ 県道30号線界隈




さてほとんどツツジを見るためだけに矢板までやってきた後は、県道30号線(r30)に乗って山縣農場跡付近を経由して那須塩原市を縦貫していく。




この季節、国道4号線(R4)や東北自動車道路が混雑ルートの王者なら、県道30号線(r30)は隠れたバイパス路(というか地元民の生活道路^^;)の地位にある。この道は矢板市片岡でR4から分岐して、矢板市街地の西側をかすめながら関谷、木綿畑、西岩崎といった那須野ヶ原の中でも標高の比較的高いエリアを通って最終的に那須町の広谷地で那須街道につながっている。那須街道を過ぎてそのまま進めば県道68号線となり、これまた広々とした酪農地帯を通って白河で国道4号線に至る。





このルートには大型の商業施設やテーマパークはほとんどなく、ひたすら田園、森林、牧草地帯を抜けていく。だからお金をジャンジャン使うレジャーをしたい層にはまったくお勧めできないのだが、純粋に春の風景を眺めたい人にとっては、混雑を避けながら移動するのにちょうど良い隠密ルートとして一押しなのである。




それにしても、本当にクルマがいない…(^^;) ラジオを点けると 「東北自動車道で渋滞が!」 …などと演出過剰気味のニュース番組が叫んでいるのが嘘のようだ。

あたりまえの話だけれども渋滞するのは皆で同じスポットに同時に殺到するからである。ほんの少しタイミングと行先をずらしてやるだけで、混雑は充分緩和できると思うのだけどねぇ。




さて喜連川丘陵帯を抜けると、那須塩原市の領域(金沢)に入る。箒川沿いの水田地帯は電線や看板のない広々とした空間である。民家は河岸段丘の上=r30に沿って並んでおり、もちろん民家のあるところには電柱が並んでいるのだが、段丘を一段下った水田部分には電力インフラは及んでいない。これが実に、清々しい。




電線や看板が無いというのは、それだけで風景を一変させる。素人写真の悪い点の第一が余計なものの映り込みなら、その余計なものの代表が電線やら看板である。それがここには最初から無い訳で、風景の撮り方を練習するにはもってこいの場所となっている。決して大パノラマ…という訳ではないけれども、r30界隈にはこういうすっきりした良景が多い。




やがて箒川を渡ると、いよいよ那須野ヶ原の領域である。…さて、次は関谷の道の駅にでも寄ってみようか。


<つづく>