写真紀行のすゝめ:撮り方とか


素人写真のフレーミングは何が悪いのか


さてナニやら偉そうなタイトルで書き始めてしまいましたが、実はこの種の How to 系の記事というのは書くのに非常に勇気が要ります。写真の世界というのは歴戦の勇士みたいな方があちこちに居られて、筆者のようなへなちょこ暇人が下手に何かをつぶやいても 「お前はわかっておらん」 とか一喝されてしまいそうでw(汗 ^^;)

…が、ここはヌルい写真道のページなので、開き直ってゆるゆると書いてみることにします。屁垂有是温道(ヘタレにもヌル道これ有り)、比一百理由一個實踐(百の理屈より一つの実践)です。いきなり芸術的な写真を撮りたいと思っても、人は一歩ずつしか進めません。素人は素人なりに、ゆるゆるる〜んと、参りましょう。




本来、写真なんて好きに撮ればいい?


さていきなりですが、本来、写真なんて好きに撮れば良いのだという主張があります。その時に見た "良いと思った景色" にそのままカメラを向ければ、少なくとも同じ景色が記録に残るでしょう、それが掛け値なしの素直な感動の記録なのですヨ…というものです。

なんだか宗教の勧誘みたいな嘘くささが漂う主張ですが、実際これはペテンです(爆) だいたい本当にそうなら、余計な知恵の付いていない最初期の写真こそが感動の名作?になっていなければオカシイのです。

しかし実際に自分の最初期の写真を見ると、そこにあるのは駄作の山…( ̄▽ ̄;)。…そうなんです、ただ適当にカメラを向けても、いかにも素人っぽい写真にしかならないのです。

ということで、前置きが長くなりましたが、今回はいわゆる素人写真について考えてみます。そして少しばかりのフレーミング(※)の工夫で見栄えを良くする方法を考えましょう。

※フレーミング:景色を画面の枠(フレーム)内に収めること。構図をとるともいう。




これが、素人写真だ!ヽ(`д´)ノ


さてそんな訳で、あまり引っ張らずに典型的な素人写真の例を掲載↓してみます。これはとある山間の温泉宿の入り口で、ツツジが綺麗だったので撮ってみた…というものです。 …が、ツッコミどころがいろいろありますね。




この写真のダメな要素をピックアップすると、

1) 画面が傾いて何だか不安定
2) 電線、看板など余計なものが写り込んでいる
3) 主題(この場合は花)が目立っていない


…などに集約できると思います。3)は撮影意図 (その場所の全体の状況を説明したいetc…) によっては外しても良いかもしれませんが、1) 2) はやはり気をつけておきたいところです。…といいますか、"いかにも" な素人風味はこれに気をつけるだけで随分緩和できると思うのです。




最低限、画面の水平は意識しよう




水平をとることの重要性は、海辺の写真を撮るとよく実感できます。画面が傾いてしまっていると写真全体が不安定な印象になって、いかにも素人っぽく見えてしまいます。せっかくファインダーの中にはガイド線が表示されているのですから、水平はある程度意識しておきたいところです。

※そういう筆者もよく傾いた写真は撮ってしまうのですが、まあそこはそれ(笑)



ちなみにダメ事例の写真の傾きだけを直してやるとこんな↑感じになります。相変わらず余計なものは写っていますが、構図がナナメっていることによる不安定感は緩和されています。傾斜補正は撮るときに直せなかった場合は後からデジタル小細工(レタッチ)で直すことも出来ます。ただし写真コンテスト等ではこういう小細工は禁止になっているケースが多いので、何かに応募するつもりなら最初から水平は意識して撮ったほうが良いでしょう。




余計なものは画面から排除する


さて風景写真の美観を損ねる2大邪魔者といえば、電線と看板です。これに準ずるものとしてバブルの頃にあちこちに立てられた意味不明の巨大アート作品などがあります。なかなか手ごわい?相手ですが、こういうものは画面から排除してしまいましょう。




邪魔なアート作品の事例として穂高の長峰山頂上の展望スペース↑を紹介しておきます。ここは北アルプスの山々と安曇野を見渡すのに最高の場所で、なおかつイイカンジで桜の木が植えてあるのですが、一番良い見晴らしのところにドーンと意味不明のオブジェがありまして、景観をぶち壊しにしています。しかも山頂に金属製のオブジェを置いたものだから落雷が激しいらしく、よくみると避雷針が追加されて 「もはやアートになってないじゃん」 という状況に…(^^;;)

そこで、オブジェより一歩向こう側に出て撮ったのが右上の写真です。特に難しいことをしている訳ではなく、ほんの数メートル移動して視界を確保しただけですが、余計なものが写っていないという意味ではスッキリです。




似たような方法で、最初のダメ写真を改善してみたのがこれ↑です。立ち位置を変えて電線と看板を除外し、主題である花を大写しにしてみました。まだ余計なものが背後にいくらか写っていてアレなところがありますが、ほんの数歩撮影者自身が動くことで、雑然とした感じがかなり整理できています。このように、同じ風景でも電線と看板を画面から外すだけで、随分と見栄えが違ってきます。構図がどうとか、露出がどうとか言う以前に、素人はこの一点にまず注意すべきではないかと筆者は思うのです。




最大の敵は視覚のご都合主義フィルター(^^;)


初心者の頃に多い失敗事例として、カメラを向けた瞬間には綺麗な景色に見えたのに、実際に撮れた写真を見ると実は電線だらけだった…ということがあります。これは肉眼で見た景色に "ご都合主義フィルター" が働いて、意識の集中している被写体意外が認識されにくくなったものです。

ここでいうご都合主義というのは、知覚/認識論でよく出てくる脳内の網様体賦活系の働きによるものです。網様体賦活系なんて専門用語を登場させるとスゴイ内容のように見えるかもしれませが、大した話ではありません。要するに眼から入った景色の情報が脳内で解釈されるときに、注目している以外の "不要なもの" が省略されてしまう現象のことで、たとえば絶世の美女を目撃したときに周辺にいた野郎の顔なんていちいち覚えていないのと一緒です(ぉぃ)。生物の視覚系にはもともとこういう機能が備わっていて効率的な情報処理が行なわれているのですが、もちろんデジカメにはそんな気の効いた認識機能はありませんから、撮影者が意識していないモノまできっちりと写り込み、後から見直すと 「何でこんなところに電線が…?」 という写真が撮れてしまう訳です。

画面の傾きについても同じで、人間の視覚は自分の姿勢が傾いていてもそれを無意識のうちに補正しながら景色を認識しています。この機能があるからこそスポーツなどで動きながらボールを追いかけることが出来、また寝転がってテレビ画面を見ていても映像を違和感無く鑑賞できます。しかしやはりデジカメにはそんな自動認識機能はありませんから、傾いた状態でシャッターを押せば傾いたとおりの写真が撮れるのです。

それを防ぐ方法は、ただひとつ。「撮影者自身が、ちょっとだけ注意を払って意識する」 …これだけです。慣れてくると特に意識しなくても電線と傾きに注意が行くようになり、シャッターを押す前にフレーミングを修正する習慣がつきます。


…そのような次第で、この投資ゼロ円で可能な対策を皮切りに、素人写真からステップアップしていきましょう。