2012.10.08 那須:姥ヶ平の紅葉(その2)




■旧トロッコ道を行く




長すぎるほど長い休憩の後は、ふたたびゆるゆると登山道を行く。




といっても中継地点の牛ヶ首までは昔の鉱山のトロッコ道に跡地をたどることりなり、ほとんど水平のヌルいコースである。




その鉱山の採掘跡地では、ここが産業遺構だとは知らない登山客が幾人も休憩していた。見晴しがよい上に腰を下ろすのに適当な石(実は鉱山の硫黄採掘施設の跡)があるので、ここは実質的な休憩スペースになっているのである。




ここにいる人たちは異口同音に 「いや〜綺麗だねぇ」 と言っていた。色の染まり具合は写真の通りで、すくなくとも残念系な状態ではない。ちなみに姥ヶ平の標高は1600m、現在筆者のいる登山道のあたりが1750mくらいで、朝日岳(1896)と比べるとやはりこちらの方が少し早く紅葉のピークが来ている。




姥ヶ平は、やや色味が渋目ではあるけれども、まあそれなりに染まっていた。ちなみに手前側の緑色のモコモコしているのはハイマツ帯の末端部である。




そろそろ日も高くなって、崖下も明るくなってきている。降りるにはそろそろ良い時間帯だろう。




そんなわけで、噴気地帯をそそくさと抜けて、降り口のある牛ヶ首を目指すことにした。



 

■姥ヶ平に降りる




スタスタと歩いて、ものの10分も経たずに牛ヶ首にやってきた。ここからは、砂礫の道を下っていく。もともと自然の枯沢だったところに踏み跡がついて道のようになったところだ。




ところどころ気を利かせたつもりなのか石組みの階段が整備されている。…こんなの、いつできたんだろう(^^;)




さてここから見渡す日の出平の北側斜面は、ちょうど見頃を迎えていた。真っ赤…というよりはオレンジ系の色具合のようだな。




途中で出会った年配のカメラマン氏が 「赤が出ていない」 とこぼしていたのはこのことを言っているのかもしれない。




参考までに昨年の同じ付近の写真を引っ張り出してみた。うーん…たしかに赤の純度という点では昨年のほうがポイントが高そうだ。

植物学的には赤い色の正体は葉に含まれるアントシアニンに由来するのだそうで、これが葉の内部で合成されるには直射日光が多いことと昼夜の寒暖差(特に冷え込み具合)が激しいことが条件だという。今年は紅葉が進行する時期に十分な低温が得られず寸止め状態が続いた訳だが、その結果がこの赤色の不足≒オレンジ色の紅葉だと理解すればよいのだろうか。




発色以外にも、葉の枯れ具合が今年はちょっと独特である。一旦紅葉が始まって途中で止まり、先に色づいた葉が枯れてしまって、炊飯器の二度炊き(?)のように残った葉が後追いで染まったような印象をうける。先行して枯れてしまった葉は遠方からみると木々の色づきを渋くみせる要因のひとつになっているようだ。




一方、こちらは割と新鮮な感じのする赤いカエデである。気温推移をみると2日ほど前からまた急激に寒くなって本日(10/08)を迎えているので、その間に色が乗ったものだろう。これを見る限り、これから色づく木々には多少の期待が持てそうな気がする。




こういった個別の木々の状態が、遠くから見ると混ざり合って大きな景観をかたちづくっている。多少の色具合の差はあっても、自然の営みの結果なのだから文句を言っても始まらない。筆者はこれはこれで美しいと思うので、あまり気にしないことにしよう。




枯れ沢の途中から、火口方面を振り返ってみた。これも定番のアングルだが、やはり紅葉の時期はいい。煙を吐く噴火口と紅葉の木々の組み合わせが見られる山というのはそうそうあるものではない。この時期の那須ならではの風情を、素直に楽しもう。




そうこうしている間に、姥ヶ平の砂地に到着した。




そして定番のアングルで今年も撮影完了。

筆者的には、これを撮らないと那須の秋が始まった気がしない(^^;) ここからどんどん紅葉は低地側に推移していき、一か月以上にわたって山裾を染めていく。週末の天気が良いことを(そしてこれから色づく木々が鮮やかに染まることを)ささかに祈っておきたい。

そんなわけでこのあたりで撤退することとした。



 

■おまけ:姥ヶ平の姥




さてそんな訳で本稿の目的地には到達してしまったのだが、最後にとある婆さんの像を紹介しておきたい。



何かというと、奪衣婆の像なのである。これが祀られているからここは "姥ヶ平" であるらしい。地名が先か石像が先かはよくわからないが、那須の最大の噴気孔 "無間地獄" を望む枯れ沢のほとりにあることから、枯れ沢を三途の川に見立てて祀られたもののようにも思える。

ここから先、三斗小屋方面に下っていくと御宝前の湯にたどりつく。昔の白湯山信仰の聖地で、この付近はかつては山岳信仰の行者フィールドだったのである。そのうち調べてみたい気もするが、とにかく遠いのでアタックするには少々気合がいる。時間ができたら歩いてみることにしよう。


【完】