2013.09.22 草津白根山〜志賀高原を行く(その2)



 

■ 火山湖展望台に登ってみる




さてそんな訳で火山湖(湯釜)から500mほど西側に作られた展望台に向かって、やや遠回りの道を登っていくことにする。…が、これも別に "残念コース" という訳ではない。



実は紅葉の時期に登るならこちらのほうが見所が多いのである。火口直近と違ってこの付近にはそれなりに植物が繁茂しており、笹原にナナカマドの赤が浮かび上がる風景が広がっている。湯釜直行コースだとこれを身近にみることはできないのだ。




紅葉の赤は、斜面上ではやはり圧倒的にナナカマドによって担保されていて、そこにほんの少しドウダンなどが混じる程度のようだ。紅葉チェッカーで見る草津白根山は楓基準の5-8℃法でみると 「少々早かったかな」 という印象なのだけれど、ナナカマドの紅葉は楓より幾分早いため、結果的にちょうどいい具合の色合いになっているようだった。




レストハウス駐車場から展望台までは100mほどの標高差があり、よく整備された通路がクネクネとうねりながらゆるやかな丘陵を登っている。笹原の深さはせいぜい1mくらいで、見晴らしはすこぶるよろしい。




火口方面を望むとこんな感じである。火口に近い方面はむき出しの土面に樹木がちらほら・・・といった風景で、特別に 「火口LOVE♪」 な属性の人でもなければ、紅葉の時期にはこちら側に登ったほうが幸せ係数は高いように思える。




さて駐車場(レストハウス)からはたった100m程度の標高差ではあるけれど、頂上付近になるとナナカマドの色合いは次第に渋くなってきた。




吹きさらしの山頂付近では、紅葉のピークを過ぎて枯れ初めている株もある。標高差で100mというと計算上は0.6℃しか気温は下がらない筈だけれど、尾根付近というのはやはり風あたりなど条件が厳しいところがあるらしい。…うむむ(´・ω・`)




一方、あまり風の影響をモロに受けない足元付近にはリンドウがちらほら咲いていた。これはこれで小さな秋の風物詩といえる。




やがて湯釜の見える展望スペースに到着。さすがに500mも先だと少々遠い気がするけれども(^^;)、まあ眺めとしてはいい感じである。

溜まっている湯の色は時期によって濃いエメラルド色から白っぽい色まで変化するのだそうで、隣で若い女性に薀蓄を垂れている山岳マニアっぽい男性の話を総合すると、今回はかなり白っぽい部類で鮮やかさ的にはいまひとつであるらしい。さらにはpHは1未満(→猛烈な酸性)で、温泉にも飲用にも使えない "利用価値の無い湯" なのだという。

※ "湯" とはいっても現在の温度は18〜20℃くらいで、グラグラと沸き立っているわけではない。




…が、そんな役に立たない湯溜まりであっても、ここにはつい最近まで人が入っていた。何をしていたのかというと、火口の底は優良な硫黄鉱床だったので硫黄鉱山になっていたのである。火口湖のほとりに杭のように見えるのが鉱山会社の建物の跡だそうで、硫黄はロープウェイで火口の外に運ばれ、現在では観光道路になっているR292の前身にあたる道を通って出荷されていた。おそらく現在のレストハウスはその集積スペースかなにかの再利用なのだろう。

※採掘は戦後の高度経済成長期まで行われていたそうで、那須硫黄鉱山と同じ頃(=昭和40年代)、製油精製プラントへの脱硫装置の普及と同時に採算がとれなくなって閉山したという。




…が、今回は鉱山探訪が目的ではないのでそっちの話題は置いておいて、景色優先でマターリとしてみる。

風景として面白いのはやはり火口にほどちかい荒野っぽい風景で、いかにも高山らしい背の低い植物の群落が地味にポイントが高い。ちょうど草紅葉が始まっていて、赤と黄色がほどよく混在して綺麗なまだら模様を描いていた。




一方、視界を180度反転して火口から反対側の長野県側(西側)に向くと、こんな感じで植物の繁茂具合がずいぶんと異なってくる。これはこれでいい景色だと思うけれど、写真栄えとしては火口周辺の希少性のほうに軍配があがりそうかな…(^^;)



 

■ 弓池




さて山頂は一応極めたので、レストハウス脇にある弓池も見てみることにしよう。




展望台から降りてくると、ちょうど一般観光客が増え始めたところであった。時刻はAM9:20のあたりで、どうやら首都圏からの行楽組が上ってくるのがちょうどこの頃になるらしい。




クルマは増え始めると一気に列を作り始め、駐車場はあれよあれよという間に満杯になってしまった。今さらながら早朝に登ってきたのは正解だったと思うけれど…なんだか極端だなぁ。




さて渋滞の始まった道路を渡って弓池にやってきた。ここも昔は火口だったようだが、長いこと活動していない間に水が溜まって湿原になってしまったらしい。




湯釜ほどではないがここでも水は酸性を帯び、湖底には水草も生えず魚もいない。植物は酸に耐性のあるものが生えているらしい。




といっても、それは説明板をみて初めてわかることで、普通の観光客が景観をみて 「ムム、これは…!」 などと分かるようなものではなさそうだ(^^;)




池の周辺には、山頂側に比べると渋い色合いに見える葉が多いように思えた。アップでみると、赤い色素は合成されているのに、葉緑素の緑がいつまでも残っていて鮮やかさに水を注している。化学反応としては葉緑素の分解とアントシアニンの合成は互いに独立した別個のプロセスだそうで、タイミングが合わないとこうい冴えない結果になるらしい。




湿原の草紅葉は、あまりぱっとしないけれども地味に進行しているようだ。ところどころにモコモコと盛り上がっているのは谷地坊主らしい。レストハウスの中の人によると 「本来はもっと綺麗なんですよう」 とのことで、台風の直撃が悪かったんですかねぇ…などと済まなそうな顔をしていたけれども、それは別に店員さんのせいではないので過剰な恐縮は無用のように思う。




その 「本来の色」 というのがどんなものかは分からないけれども、見ればところどころに妙に鮮やかな部分がたしかにある。これが弓池湿原の本来の草紅葉の色だとしたら、来週あたりには素晴らしい景色が見られるのかもしれない。




さてそれはともかく、山頂側を見あげると増殖する観光客の群れが巡礼者の如く列を作っているのがみえた。そろそろ大型の観光バスも到着し始め、山上のラッシュアワーが始まっている。あまり長居をすると脱出の機会を失うかもしれないので、このあたりで撤収することにしよう。




そんなわけでレストハウスで少しはやめの昼食をとり、売店をサラっと眺めて脱出。

ちなみに標高2000mにもなるとポテチの袋なども気圧差でパンパンに膨らんでいる(^^;)  この現象がみえるのは包装の気密がしっかりしている証拠でもあるので、お土産を買うときの吟味どころのひとつといえそうだ。


<つづく>