2014.09.27 那須:姥ヶ平の紅葉(その2)




■ 峰の茶屋避難小屋

 


やがて峰の茶屋避難小屋に到着。ここは硫黄高山時代の茶屋の跡で、現在は避難小屋が建っている。




風が強く岩だらけの稜線。生えているのはわずかにコメススキの仲間くらいで、よくみるとその間にちらほらとリンドウが紛れている。




尾根向こうの熊見曽根に目をやれば、おお…こちらも良好に紅葉の色が乗ってきているな。




地元にいるとなかなか意識しないのだけれど、他の山に比べると那須の紅葉は "赤" の成分が非常に強く出る。気候によるものか樹種の分布によるものかはよく分からないけれど、面白い特徴だと思う。




さて御宝前方面を眺めると、紅葉バンド(横一直線に伸びる紅葉の帯)がよくみえた。同じくらいの気温レベルにあるところが一斉に色付いているもので、標高依存性≒最低気温レベルに対する依存性が視覚的にみえているものだ。これから一ヶ月ほどかけてアレが山裾にむかって降りていく。バンド内に入っている部分が "紅葉シーズン中" ということになるわけだ。



 

■ トロッコ軌道跡




一服したら、今度は牛ヶ首方面に向かっていく。ほとんど横一直線の登山道は、かつての硫黄高山のトロッコが走っていた軌道の跡だ。




ちなみにさきほどの避難小屋から50mくらい下ったところに、そのトロッコの軌道(レール)が捨ててある。軌道は鉱山が閉山するときに撤去され、大部分は解体して鉄屑として処分された筈なのだが、一部回収し損ねたものがそのまま捨てられたようだ。

野ざらしにしておくくらいなら案内板のひとつも立てれば良いと思うのだが、残念ながらその予定は無いらしい。せっかくの産業遺構なのに何やら勿体ない気がしないでもない。

※ちなみに鉱山トロッコ用はいわゆる軽レールの規格で、一般的な旅客軌道のものと比べるとかなり細い。




さてトロッコ軌道跡の高さ=登山道(峰の茶屋〜牛ヶ首)のあたりは、かつての噴火の余波で荒涼とした溶岩隗と砂礫の斜面となっている。しかしよく見ると徐々に植物が登ってきていて、秋になるとその植生の広がりが紅葉(黄葉)によるマーキングでわかりやすくなる。こういう紅葉も面白いものだ。




やがて噴気地帯へ。アングルが良いので筆者はここの石組から姥ヶ平の遠景を撮ろうと思っていたのだが…




ちょうど狙いすましたかのように雲の塊がドドド…と流れてきて日が陰ってしまった。ぐぬぬ。




実はこの日は、同じようなパターンで日差し待ちをすることが多かった。山の天気は変わりやすいというけれどもまったくその通りで、特に撮影登山ではタイムロスが予想外に発生する。

まあ今回筆者は暇人モードなので雲が晴れるまでゆる〜りと待てば良い訳だけれども、余裕のないスケジュールで名所のハシゴをしようとすると、こういう場面ではストレスを抱えることになる。風景を撮りたい場合は、やはり余裕を多めに見込んだほうがよさそうだ。




さてそうやって日差しが一瞬戻ったところで、ひょうたん池を見下ろして撮ってみた。木道を登山客が歩いているのが見える。向こうは向こうで、こちら側を見ながら写真を撮っているのだろう。




そして姥ヶ平。おお…今年はかなり鮮やかに染まっているな。



 

■ 姥ヶ平に降りる




やがて牛ヶ首に到着。いつの間にか、新しく標識が立っている。誰が決めているのか謎ではあるけれど、姥ヶ平に降りていく道すじには 「姥ヶ坂」 という地名がついたようだ。

聞けば地名よりも銘版の下にある番号が重要らしく、土地勘のない人が遭難したときにこの標識の番号を携帯電話で伝えると救助しやすくなる…というシロモノらしい。登山カードの強引な記入勧誘(笑)もこれに連動したものだったと思えば良いのかな。(携帯のGPS座標を見た方が手っ取り早そうな気もするけれど… ^^;)




牛ヶ首から向こう側は、雲がごんごんと押し寄せてきて真っ白になっていた。雲の流れは結構速く、青空と雲塊が交互に現れている。いまのところ雲は茶臼岳の東側に流れていくのが主流のようだが、ちょっと風向きが変わるとこちらに来そうな雰囲気だ。




こういうときは早めに目的地を攻略しておかないと、雲に飲み込まれる可能性がある。そんなわけでそそくさと降りていくことにする。




降りていく途中、姥ヶ平を見渡すとやはりすこぶるいい発色をしている。これだけ色が乗っていればほぼ 「見頃」 といって差し支えないような気がする。




まだ若干オレンジっぽい気配はあるものの、赤い色のノリはとても良い。≦3℃の冷え込みが2日しかなくても、≦5℃=10日、≦4℃=7日の累積があればアントシアニン(赤色)の合成はそれなりに進むということかな。




そのまま枯沢に沿って降りていき…




姥ヶ平に到着。




そしていつもの定番ショット。昨年は雨が降っていて視界が効かなかったけれども、今回はばっちり撮ることができた。いや〜、よかった、よかった(^^;)




姥ヶ平にはドウダンに加えて楓の木が多い。色のノリがよい個体はこんな感じで非常に冴えた赤色であった。日本の落葉広葉樹林は極相に至るとブナとカエデの森になってしまうのだそうで、人の手が入って里山化するとナラやクヌギが増えるという。そういう意味では、那須〜塩原の山々に楓が多いのは、里山化するほどの伐採が進まなかった…という証左なのかもしれない。




ちなみにこちらが満天星(ドウダン)である。ツツジの仲間で、黄葉の発色が良いので街路樹などとしてもさかんに用いられる樹木だ。那須の山々赤色は、だいたいこのドウダンと楓、そしてナナカマドの仲間で占められている。

※ナナカマドは楓の赤色が立ち上がった頃にはピークを過ぎてしまうのでちょっと微妙なのだが、ここでは四捨五入して書いている(^^;)




ただこの日、完全に真っ赤に染まっているのは全体の2割くらいで、残りは黄色から赤への遷移の途中であった。遠くからみてオレンジっぽく見える木々は、近くに寄るとこんなふうになっている。つまりこれからさらに赤い色彩は進むということである。今後の冷え込み具合にもよるだろうけれど、本当の見頃はこれからだろう。




翻って、これを見るとやはり本日の状況は "見頃の端緒" 段階という評価になるのだろう。

今年は紅葉シーズンが始まる前に 「≦3℃の冷え込みが3日間累積」 という仮説を立てた訳だけれど、姥ヶ平の見頃についてはだいたいそれで合っていると思ってよさそうな気がする。単に "色が付いているだけ" で良ければもっと早期から該当するのだが、写真映えする風景を見ようとするとこのくらいが妥当かな…と、筆者は大雑把に捉えている。



 

■ ひょうたん池




さて姥ヶ平に来たら、ひとまず地名の元となった脱衣婆の像を眺めて、ひょうたん池に向かってみた。よく見ると脱衣婆の頭巾と前掛けが昨年とは違っていて、ちゃんとメンテナンスしている人がいることがわかる。




そんな訳で木道をスタスタと進んでみたのだが…



残念ながら、ここでまた巨大な雲の塊が流れてきて日差しが消失(^^;) …しばらく待ってみたのだけれども回復しそうにないので、本日はここでトライアル終了と判断し、リターンフェーズに入ることとした。




日照さえ確保できれば行人道方面も見ておきたかったのだけれど、こればかりは仕方がない。また機会を改めて、眺めにくることとしたい。

…ということで、少々尻切れトンボだけれども、今回はここまでである(^^;)


【完】