2021.10.02 紅葉の鳥羽口紀行 〜敢えてプランBを行く〜 (その1)




紅葉の奔りの様子を見てみました (´・ω・`)ノ



そろそろ紅葉の始まりといって良さそうな季節になってきたのでいくらか山間部を周遊してみることにした。といっても今回はいつもの定番=姥ヶ平は狙わない。毎度毎度マンネリな展開のプランAから脱して、敢えてプランBでストライクゾーンを外してみようというのが今回の趣向なのである。

背景としては、もはや姥ヶ平を狙うには週末観光は事実上不可能になっているという事情がある。ロープウェイの駐車場は夜間進入禁止でキャパは半減、峠の茶屋の県営駐車場は前日からの車中泊組で埋まっていて、暇のあるリタイヤ組でないと場所取りには参戦できない。……ならば切り口を変えてみようという訳だ。

行先は南会津の七ヶ岳(ななつがだけ)の周辺とした。狙う樹種もカエデではなく、もうすこし早めに色づく雑木の類を見てみることにしよう。




ちなみにこの日、姥ヶ平(1600m)はまだ見頃には幾分か早い状況で、地元紙である下野新聞によれば色づきは始まっているものの赤色の立ち上がりはこれからといった状態であった。

当然のことながらこれより標高の低い平地では本格的な紅葉の立ち上がりはみられない。しかしまあ、そこを敢えて周遊してみるのが本日のテーマなので、細かいことは気にしないで出発してみよう。




そんなわけでいつもの如く那須塩原駅を起点に走り始めてみる。那須野ヶ原のど真ん中、標高はおよそ300m付近。ここではまだ紅葉らしい紅葉は始まっていない。




■ 那須ガーデンアウトレット




手始めに、那須塩原駅から駅前道路(r53)を5kmほど進んで那須ガーデンアウトレットに寄ってみよう。ここは東北自動車道の黒磯板室ICの目の前にあるアウトレットモールで、イタリアの地方都市を模した街並みの中に多数の店舗が軒を連ねている。




とはいえ駐車場はこんな状況で、ちょっと広々しすぎなんじゃないの的な閑散具合であった。時刻は 09:20、ここの営業開始時間は 10:00〜 なのでまだ客の入りは少ない。




さて本日のところは筆者の関心事はショッピングモールには向かっていないので華麗にスルーし・・・(ぉぃ)




敷地内に散在する桜の樹を見てみることにしよう。




桜はカエデなどの "秋の紅葉の定番" といわれる木々とくらべて格段に早い色づきを見せる。 まず葉緑素が分解して緑色が消え、やがて窒素系色素のアントシアニンの合成が進んで赤みを帯びる。このプロセスはほとんどの植物において共通で、葉に含まれる酵素の働きによって進行する。

しかしその発動するタイミングは植物の種類によって大きく異なっている。桜はどういうわけかこれが非常に早く働き始めるのだ。




ちなみにこの日、アウトレット付近の気温は8℃未満の累積が0日、15℃未満の累積が12日という状況であった。15℃未満が12日というのは箒草の一種=コキアの紅葉条件と一緒で、おそらく秋に色づく木々の中では最も早いグループに相当するのではないだろうか。




それを鑑みると、紅葉チェッカーに15℃の積算ゲージを組み込んだのは正解だったかもしれない。このゲージはほとんどコキアのためだけに付けたものだが、桜にも応用できるなら秋の端緒のセンサーとして悪くない。




などと思っているうちに開店時間となり、ゾロゾロと人が入り始めた。有名無実化していたコロナの緊急事態宣言が開けて2日目ともなると、観光客もごく普通に動いているらしい。




見ればクルマの展示イベントが開催されている。飲食系の移動店舗車も普通に営業しているし、まことに結構なことだ。観光地在住の者としては 「経済よ、回れ〜」 などと呪文のひとつも唱えておきたい。




さて話を紅葉に戻すけれども、筆者的には 「いい感じじゃないか」 との所感をもっても、この程度の色づきでは来場者の注目を集めるほどのインパクトは無いらしい。皆スルーしてモールのほうに行ってしまい、「あら色づいているのねぇ」 などというリアクションはまったく絶無なのである。




まあぶっちゃけた話、この時期に紅葉狩りに興味のある人は那須ロープウェイ方面に向かうだろうし、アウトレットに開店早々にやって来る人に買い物以外の "風流" を求めるのはお門違いなのかも知れない。

…まあ世の中、そんなものなのだなぁ。




■ 千本松牧場




さてアウトレットを出てからは千本松牧場へ向かってみた。 r55 で那須塩原駅前から井口〜赤田へと抜けていくと、接骨木(にわとこ)付近の銀杏(イチョウ)並木が少しずつ黄色味を帯びてきているのが見える。

銀杏の "黄葉" はものすごくゆっくりと進むので見頃になるにはまだしばらく掛かりそうだけれど、8℃未満の累積日数0日でも色づきのスイッチは入るようだ。




そういえば昨年国営ひたち海浜公園に出かけたとき、最低気温が10℃を切ったくらいのタイミングで銀杏の黄葉が立ち上がっていたのを思い出した。個体ごとにバラツキはあるとしても、だいたいそのくらいで銀杏の色づきは始まると思ってよさそうかな。




赤田に抜けてからはR400に乗り、西那須野ICを過ぎれば広大な千本松牧場に至る。高速道路を降りてすぐ目の前という立地なので首都圏からの観光客が多く訪れるところだ。ここの紅葉具合もチェックしておこう。




そんなわけでささっと到着。




さて秋の風情は……とメイン通路の並木に目をやると、観光客はぼちぼちといったところだが紅葉はいまひとつだな(笑)




見れば確かに色づきは始まっているのである。しかし葉の量が夏の半分以下くらいにまで減っている。牧場の人によると、秋雨前線が停滞していたころに雨で落ちてしまった葉が多いらしい。

…なんてこったい。




足元をみるとこんな感じで、たしかに色づいたらすぐに落ちてしまっているという様相だ。きれいに染まる葉は結構いい赤色を呈しているだけに、ちょっと勿体ないところだな。



芝生を覆う干からびた落ち葉の死屍累々。せっかく色が乗っても、いちど落葉してしまえばすぐに色褪せてしまう。花のいのちも短ければ紅葉のいのちも短い桜の、なんと儚(はかな)いことよ。


(つづく)