写真紀行のすゝめ:ハードとか


コンデジと一眼レフは何が違う


前節ではデジ一眼を思い切りPUSHしてみました。では何が違うのさ…というのが今回のお話です。




かなり大雑把な比較


あまりグダグダと引っ張らずに過去3〜4年(2012〜2015年)ほどを眺めて標準的と思われる製品で差を一覧↓にしてみました。なおここでいうコンデジとはポケットサイズの機種を想定しています。一眼レフ機に近い外観の高級コンデジは実質的にレンズ交換のできない一眼レフ機のミラーレス版(ややこしい)みたいなものなので除外しています。(ミラーレス機は結構面白そうなカテゴリだと思いますが ^^;)

   コンデジ  デジ一眼
 撮像素子のサイズ  制限なし(小型化が顕著)
売れ筋は1/2.3インチ程度
 35mmフィルムサイズが基準。
市場の主力はAPS-Cで、
フルサイズはぼちぼち微増中
 レンズ 交換不可 
プラスチックモールドが多い
口径は一般に小さめ
 交換可能
光学ガラスが使われる
口径は一般に大きめ
撮像 感度  一般に低め
一般に高い
 絞り  無い
NDフィルタで明るさのみ2段階で
切替えできる機種が多い
 一般にレンズには羽絞りがあり、
被写界深度やボケ味の調整が可能
 AFセンサ  無い
撮像素子で代用しており
動作は遅め。動体追従は難しい。
 専用のセンサが搭載されている。
動作は速く、動体予測に強い。
 バッテリー  専用リチウムイオンバッテリー使用。
コンパクト性優先で容量は小さい。
 専用リチウムイオンバッテリー使用。
容量は大きい。
 シャッター  無い
(信号を読み取るタイミングを変える
ことで電子シャッターと称している)
 フォーカルプレーンシャッター
(フィルムカメラと同じ機構)
 消費電力  意外と高い
(起動中ずっと液晶表示している、
ライブビューしっぱなし等)
 低い
(光学ファインダー式なので
あまり電力を食わない)
 満充電での撮影枚数  少ない 多い
 画像処理効果  てんこ盛り 少ない 
 ボディ色のカラー
バリエーション
豊富  漢は黙って黒一色

コンデジの 「絞りが無い」 「AFセンサが無い」 って何だよ、とツッコミが入るかもしれませんが、これは本当です。驚くべきことにコンデジにはシャッターもありません。撮像素子の出力を読むタイミングのON/OFFでシャッター相当の動作をさせているだけです。

コンデジとデジ一眼の売れ線価格帯は、2015年5月現在、コンデジが1万5000円前後なのに対しデジ一眼が7万円前後(レンズキットで10万円前後)と4倍以上の開きがあります。これは一眼レフが高いというよりも、コンデジ側が非常に割り切った設計で余計なものをそぎ落として安く仕上げているものです。




実はかなり頑張っているコンデジ


コンデジの "安く作るための工夫" とは、上の表にもありますがレンズはプラスチックモールドで小さく作り込み、絞りは最初から固定(というか絞りという名の部品が無い)、明るさの調整はNDフィルタの挿入で2段階のみと大胆に省略し、AFセンサやシャッターメカすら搭載せず、光学系が簡素なぶん信号処理側に頼った絵作りをするというものです。

…と、こう書くといかにもチープなつくりのようですが、部品点数こそ簡素で安っぽいながらも、信号処理の技術が最近は長足の進歩を遂げていて安価な割にはなかなか良い画質を提供してくれるようになっています。



…ただしそれで写真紀行などをやろうとすると、ちょっと条件の厳しい場面だとすぐにお手上げになってしまったり、バッテリー切れで泣くことになるケースが増えます。クルマでたとえるなら軽自動車みたいなものでしょうか。キビキビと小気味良く走りますけれど、広大な砂漠や雪原をオフロード走行するのには向きません。それでも乗り出す場合には、せめて予備のバッテリーはたくさん持っていきましょう。ちなみに筆者はデジ一眼に乗り換える前はコンデジ+バッテリー大量持ちでした(爆) …ええもちろん苦労しましたともw

※なおポケット型のコンデジは、最近ではスマホなどの携帯電話のカメラ機能とバッティングしつつあり、高級路線に転換しつつ住み分けを始めている気配があります。今後は製品カテゴリ自体が変わっていくかもしれませんね。




デジ一眼は画質もさることながら、実はスタミナが素晴らしい


一方のデジ一眼はというと、撮像素子が大きくて1画素あたりの受光面積が大きい上に、レンズも大きくて十分な光量を確保できるためコンデジに比べると画質は非常に安定しています。…が、実はそれ以上に写真紀行用としてありがたいことがありまして、バッテリーの持ちが驚異的に良いのです。

筆者の手持ちの機種でいうと Nikon D300、Nikon D750 のスタミナが特に素晴らしく、1回の充電で約2000枚の撮影が出来ます。一日1000回以上シャッターを切るというのは結構なハイペースだと思いますけれども、そのくらい撮りまくっても電池の交換が不要と分かっていれば、山でも川でも離島でも安心して深入りできます。旅写真では、これが本当にありがたい。

これは電池が大型であることも然(さ)ることながら、液晶画面に頼ったライブビューを使わないことが大きいのでしょう。コンデジでは電源をONしたら基本的にずーーーっと撮像素子に電圧をかけっぱなし+液晶も点灯したままでライブビュー状態を維持しつづけ、シャッターボタンを押そうが押すまいが電力を消費しています。これがデジ一眼では被写体はファインダーを通して光学的に捉えていますので、その間の電力消費はきわめて小さくて済むのです。




この特性が非常に役に立つのが、車窓写真を撮るときです。

車窓から眺める風景は旅の醍醐味のひとつです。しかしコンデジでこれを撮ろうとすると、うまくいきません。電線や樹木、看板など視界を遮るものが次々と流れ去っていくなか、ジャストタイミングを狙うにはひたすらチャンスを待つ必要がありますが、コンデジでは無駄なライブビューを延々と続けることになり、あっという間に電池を消耗してしまうのです。それでは…とライブビューは控えて 「シャッターチャンスがきたらすばやく電源ON!」 …を狙おうとしても、コンデジは一般に起動が遅いので殆ど間に合いません (散々経験済み ^^;)。

しかしデジ一眼なら低消費電力のままファインダーの光学像を覗いていれば良く、電池切れを心配する必要はほとんどありません。運悪く電源を落としているときに不意に 「おっ♪」 と思う風景がみえても、起動は0.2秒未満で完了するので即応できます。このようにシャッターチャンスに滅法強くなるのが、デジタル一眼レフなのです。

…だから、さぁ、早く清水の舞台から (ぉぃ ^^;)