写真紀行のすゝめ:ハードとか


絞りは何のためにある


さていよいよ撮り方っぽい話になってきます。今回は絞りの話ですが、「写真紀行のすすめ」 という文脈の中での 話しなのであまり深いところまでは突っ込みません。そんなわけで軽やかに参りましょう。




絞りとは


絞りとはレンズ内部にあるリング状の羽根の集合体で、目でいえば瞳に相当します。レンズによって可変型/固定型がありますが、 一眼レフのレンズでは一般に可変絞りが多いです。中央の窓のような部分が開いたり閉じたりして撮像素子に到達する光を選別しています。

この絞りを限界一杯まで開くことを 「開放」 といい、このときレンズ内に入る光量は最大となります。これがそのレンズの明るさを示します。 それを数値で表したのが開放F値で、数値は小さいほど明るいことを示します。

レンズの型番をみると、たとえば AF-S NIKKOR 18 - 200mm 1:3.5-5.6 G ED などと書いてありますが、この3.5とか 5.6 というのがF値です。 ズームレンズでは同じ開放状態でも広角側(ワイド端)と望遠側(テレ端)では明るさが異なるので数値が2つ書いてあります。

これが何を意味するかというと、ものすごく簡単に言えばシャッター速度とボケ味に関係してきます。その関係を簡単に表にすると以下のようになります。 普段写真を撮るにはこの程度の挙動を知っていれば十分でしょう。


なおコンデジでは必ずしもこの表の通りにはなりません。羽絞りのある高級機種では一眼レフと類似の挙動を示しますが、ポケット形では羽絞りが無い機種が多いからです (つまり絞るという動作ができない)。こういう機種ではスモークフィルム状のNDフィルタがスコっと入って明るさの調整を大雑把に2段階で行なっているのみです。 その場合はボケ味のコントロールは効きません。

※ところでデジ一眼で意外と盲点になりやすいのがAFです。おおよそ開放F値5.6くらいまでのレンズならどのメーカーのボディも追従してきますが、 6.3を超える暗いレンズだとちょっと挙動が怪しくなって使えないケースが多いのです。高倍率ズームレンズの安価なシリーズはかなり暗いので、 超望遠を買う場合などは 「俺はマニュアルフォーカスでバリバリ使えるぜ!」 というのでなければ事前にデータシートを確認して、AFが使えるか 確認したほうが無難です。




F値とボケの関係


さて絞りは毎度毎度開放で使う訳ではなく、適当に絞って使います。その主な用途は焦点深度と明るさの調整にあります。絞る=F値を大きくするほど 背景はシャープに、開放する=F値を小さくするほど背景はボケ気味になります。この効果は望遠側であるほど顕著に出ます。

下の写真は室内で135mmで撮った事例で、左がF14、右がF5.6 の場合です。同じアングルでも絞りが開放気味の方が背景がボケているのが分かると思います。 これをうまく使うと、たとえば人物をドンと真ん中に置いて背景はぼかし気味にしてポートレート等を撮影する等ができます。



風景写真などで手前から遠景までピントが合った状態(=パンフォーカス)を得たい場合は、F8以上(出来ればF13くらい)まで絞ってやればシャープに 写すことが出来ますし、望遠気味で絞り開放にすれば背景(手前側も)をぼかし気味に出来ます。

…と書くと、ちょっと待て、上の作例だとF14でも背景がボケてるじゃないか…とツッコミを入れたくなった方もいるかもしれませんが、これは手前の コーヒーボトルまでの距離が1mくらいしかなくて、さらには効果が目立つように望遠気味で撮っているからです。3〜4m以上離れればパンフォーカスに近い絵になります。




背景をぼかす撮り方は、花などの撮影でよく多用されます。マクロレンズで絞り開放気味に撮っても良いですし、望遠で絞り開放にしても似たような写りになります。 使い方としてはマクロは接写、望遠は文字通り遠くから被写体をアップに写しとります。




望遠レンズの場合には、たとえば池に咲く蓮の花などを撮るときでも、池の中までジャブジャブと入っていかなくてもこんな写真が撮れます。 いろいろ遊べますので、ズームレンズを持っているなら絞りをいろいろ変化させながら試してみると良いでしょう。





しかし暗いところでは、結局選択の余地は無い


ところで絞り設定によって写真に味付けが出来るといっても、振り幅が確保できるのは一定の明るさがある場合です。暗い環境では手ぶれ防止のため、 特に軽装+手持ちで旅をしているときにはカメラ側のISO感度を上げるか、絞りを目一杯開放にして光量を稼ぐしかなくなります。夜のお祭りの風景などはその典型といえます。




夜景撮影については、項を改めてのちほど触れたいと思います。