写真紀行のすゝめ:ハードとか


シャッター速度と明るさ


絞りの話をしたのでシャッター速度の話も書いてみます。



シャッター速度は、正しくは露出時間


さて写真用語というのは同じようなことを幾通りもの言い方で表現したりするので少々ややこしいところがあり、シャッター速度も実はそのひとつです。フィルム時代のシャッターは本物の遮光幕で、先幕、後幕が時間差を置いて走るフォーカルプレーンシャッターという方式が主流でした。ところで 「シャッター速度」 とはこの幕の動く速度のことではなく、フィルムが露出している時間のことを指します。そういう意味では露光時間とか露出時間と言ったほうが適切のように思えますが、世間一般ではなぜか 「シャッター速度」 で通用しています。…ま、いいんですけどね(^ω^;)

デジカメではフォーカルプレーンシャッターを搭載した機種と、撮像素子から信号を読み取るタイミングだけでシャッター相当の働きをさせる電子シャッターが混在しています。電子シャッターは安価に実装できるためコンデジに採用されることが多く、フォーカルプレーンシャッターはデジ一眼に採用されることが多いです。

シャッター速度は伝統的に分数で表現します。1/100秒、1/500秒、1/2000秒 …などとキリのよい数字で、上限は1/8000秒くらい、下限は開きっぱなしのBULBまであります。手ブレを起さずに撮影するには大雑把に言って1/100秒より短い時間で撮影していればまず大丈夫です。しっかりとカメラをホールドして撮れば1/15〜1/30秒くらいまではなんとか手持ちでもいけますが、このあたりになるとそろそろ三脚が欲しくなってきます。




シャッター速度を変えるとどう写る




さてシャッター速度を変えるとどういう画像が撮れるかというと、あたりまえですが高速にするほど物体がぴたりと止まって写ります。これ↑は公園の噴水1/3200秒で撮ってみたものですが、水しぶきが綺麗に止まって見えています。水はシャッター速度を振って遊ぶにはちょうど良い被写体で、設定に応じてさまざまな姿を見せてくれます。




こちら↑は1/2000秒で撮ってみた波しぶきです。作例はビッグウェンズデーみたいな見栄えのする巨大波ではありませんが(^^;)、波頭の砕ける感じはうまく捉えられていると思います。

筆者の現在の主力機(Nikon D750)はスペック上は1/4000秒の高速シャッターが使えますが、このサイトで撮っているような 「なんちゃって風景撮影」 程度では実用上そこまで使う機会はまずありません。感覚的には1/2000秒程度の高速性があれば流れる水の表情を十分に止めて写すことができると思います。つまりは安価な入門機でも結構遊べる訳です。

※D750では従来機では対応していた1/8000秒の使用頻度がそれほど多くないことから、シャッターユニットの軽量化のために最高速度を1/4000に抑えた設計になっています。…で、それで困ったかというと、筆者的にはあまり不都合は感じていなかったり(^^;)




反対にスローシャッター気味にして1/2〜1秒くらいかけて撮ると、同じ水でも糸を引いたように水滴が軌跡を描いて写ります。作例↑は1/2秒で滝(那須塩原市:乙女の滝)を写したものですが、うまい具合に糸を引いて写っています。渓流の水の流れを幻想的に演出するのによくこの手法が使われます。



また別の使い方としては花火の撮影などがあります。夜間なのでISO感度を上げたり絞りを開放一杯にして手ブレを防ぎたい方向に意識が向いてしまうかもしれませんが、花火撮影ではシャッター時間をあまり短くしてしまうと光の軌跡がうまく写りません。そこでわざとスローシャッター気味にしてカメラのほうは三脚で固定するか、手持ち撮影の場合はぎりぎり手ブレにならない程度のシャッター速度を狙います。

上の作例は手持ち撮影で、135mm レンズでISO1000、シャッター速度1/10秒で撮っています。ピントを無限縁に合わせたつもりがちょっとずれてしまっていますが(笑)、まあそこはそれ。三脚があればもう少しシャッターを遅めにして花火の軌跡を引っ張っても良かったかもしれません。

ところでこれらの手法は実はカメラを初心者モード (プログラムオート等)にしていたのでは意図的には使えません。マニュアル、もしくはシャッター優先オートなど、シャッター速度を調節できるモードにして撮影します。(慣れてくると絞り優先オートでISO感度を振って意図する条件を作ることもできますが、それはたぶん邪道…なんでしょうねw)



忘れちゃいけないトレードオフがある


ところでシャッター速度は好き勝手に設定できるわけではありません。絞りやISO感度とのトレードオフを考える必要があります。撮像素子に当たる光の量、つまり露光量は

露光量 = 明るさ X 露光時間

で決まります。この式の関係を相反則といい、写真は常にこの法則に支配されます。たとえば絞りを絞って撮像素子に届く光の量が半分になった場合、シャッター速度を遅くして2倍の時間光が当たるようにすればバランスが取れるということです。

初心者の方はこの感覚に慣れるまでに少し時間を要するかもしれません。…が、すべてをマニュアルで撮る必然性はありません。今どきのカメラにはオート機能が充実していますから、ある程度はお任せで行けてしまいます。シャッター条件を振りたいのであればシャッター優先オートで撮ってみれば良いのです。慣れるまでは失敗気味の写真を量産しても気にしないでガンガン行きましょう。フィルム時代と違ってデジカメは失敗によるコストロスはタダみたいなものですから。

…ということで、最後に少々失敗気味の写真を載せておきます。これはとあるステーキ屋さんでシェフのお兄さんが 「ホォォアァァ〜〜っ♪」 とパフォーマンスしているシーンです。照明が暗めのところで絞り優先オートで撮っていたため、シャッター速度が二の次になって "単に塩胡椒するだけ" の行為に過剰なエネルギーを使ってくれているシェフ氏に追いついていません。…しかしまあ北斗神拳並みの調理演出の激しさはうまく表現されているともいえ、これが本物の手ぶれですヨ、とオチをつけたら座布団の一枚も…え? ダメですかw