写真紀行のすゝめ:撮り方とか


下手な鉄砲数撃ちゃ当たる論


今回は、タイトル通りの内容です(笑)。ちょっと気合を入れて遠征する場合など、なるべく失敗せずに撮りたい…とは誰しも思うもの。…が、その 「失敗しない」 というのが狙ったとおりにピッタリ、という意味であるならば、実はそんな写真はほとんど無いなぁ…というのが筆者の実感だったりします。いやまあ、それが実力といえばそれまでなのですがw




「撮る」 のではなく 「出現する」?


さていきなり爆弾発言ですが、筆者の場合はヌルい写真道(笑)なので試行錯誤の果てに 「今日のベストはこのくらいかなぁ…」 なんて感じでお気に入りのショットが "出現" すればヨシという感じで撮っています。

…で、そのお気に入りの一枚がどのように生まれるかといいますと、実はあまり理論どおりには行きません。狙ったショットからすこし外れたところに案外いいショットが(結果的に)撮れていることが多くて、条件やアングルを少しずつ変えながら何枚も撮影しておき、後日見直しながらピックアップしているというのが実情です。結局のところは 「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」 という方法論なんですね。

…え? 邪道を説く前に実力を上げろ? …そんなクリティカルなことを要求しちゃいけません。ここはヌル道をつぶやくコーナーなんですから、偉そうなことは偉そうな人にお任せしておけば良いのです。我々庶民は、出来る範囲で写真を楽しみましょう♪




デジカメなんだから物量作戦で行こう


そんな訳で、少ないショットで成果を上げている匠(たくみ)の領域に達している人にはまったく参考にはなりませんけれども(^^;)、筆者の実際に撮っている記録から適当にサムネイル↓を抜き出してみました。

さて見れば分かるとおり、ここでは補正を変えたりアングルを変えたり、また分かりにくいかもしれませんがPLフィルタの効きも変えたりして同じような景色を何回も撮っています。波打ち際の写真では波の砕け具合がイイカンジで撮れるまで延々数百ショットも撮ったりしています。






フィルムカメラ全盛期には、こういう撮り方が出来るのは財力に余裕のある人かプロカメラマンくらいでした。言うまでも無くフィルムプリントでは1枚あたりのコストが高かったからですが、デジカメが普及してフラッシュメモリも劇的に安くなった今では誰もが 「下手な鉄砲」 を撃ちまくれる環境が整っています。これはもう、神の啓示に遇ったようなもので、使わない手はありません。

参考までに筆者のカメラ(Nikon D300)では標準画質のJPEGはおよそ3MBの容量になり、32GBのコンパクトフラッシュを1枚挿しておけばフルサイズ+標準画質で約8500枚撮ることができます。容量を使い切るには予備のバッテリーが何個か必要になりますが、これだけ無駄弾を撃つ余力があれば心置きなくブラケットだろうが連射だろうがズダダダ…とかますことができます。最初は当てずっぽうでも、だんだん枚数を重ねてくる間に試行錯誤がすすんで撮影の要領もつかめて来るでしょう。

…そう、下手な鉄砲は 「数を撃て!」 できっと正しいのです(^^;) そんな訳で、撃ちまくりましょう!




RAWファイルってどうよ


さてこれは余談めいたお話で、撮り続けていたらいつの間にかこうなったでござる…という巻。

デジ一眼の売りのひとつにRAWファイルを扱える、というのがあります。撮像素子の生(RAW)の出力値を保存しておいて後から信号処理のプロセスをソフト的に補う(→現像)というもので、上級者の方になると全ての画像をRAWファイルで撮影しないと気がすまないという人もいます。たしかにホワイトバランス未調整の色深度12bit〜14bit のデータが残っていれば色調整、輝度調整はかなりの自由度をもって事後に調整可能です。色飽和にはかなり強くなるでしょう。またJPEGの "撮って出し" を量産するより、RAWで1枚撮っておけば良いじゃない、という主張は昔からよく聞きます。

筆者もデジ一眼を買ったばかりの頃は 「それも一理あるかな〜(´・ω・`)」 などと思ったこともありました。…ところが、最初にしばらく遊んでみた後、筆者は結局普通のJPEGで必要十分との結論に達し、RAWファイルを使わなくなってしまったのです。理由は

@ いちいち現像なんて面倒 (撮ったところでどうせ現像しない)
A ファイルサイズがデカすぎ
B 構図をいろいろ試そうとしたら結局たくさん撮るしか無いじゃん(^^;)
C JPEGでクォリティは十分だろう


…あたりでしょうか。

現像といっても標準設定でバッチ処理(=まとめてホイ)だとカメラ内部で行うJPEG変換とたいして変わらんのじゃないかという気がしますし、果たしてデジ一眼所有者の何%がRAW現像を日常的に行っているのか、その実態には(皮肉でもイヤミでもなく素朴に)ちょっと興味があります。RAWはフォーカスの甘さや手ブレを直してくれる訳でも、構図を直してくれる訳でもありません。元画像の素性が良かった場合に、カメラ内部のJPEG化では変換時に量子化で失われてしまう諧調を救えるというだけです (※細かく突つき始めるとキリがないのでここではそういう表現にしておきます)。

またJPEGの "撮って出し" はRAWマニアの方が言うほど捨てたものではありません。圧縮ロスを気にする人もいるかと思いますが、もともとJPEGは圧縮率 1/30 くらいを想定して規格が作られていたものが、デジカメでは1/4(Fine)、1/8(Normal)くらいでかなり高画質側に寄せて運用されています。圧縮単位の1ブロックは 8x8 pixcel で、12Mpixcel とか 14Mpixcel といった昨今の画素数からすればブロックノイズを気にするほどのこともありません。

実はこの 「RAWってあんまり使わないよね」 的なお話は写真サイトでは禁句(?)のようで、大抵は "JPEGで満足するとはレベルの低いヤツ" ということでバッサリ斬られるか、可哀想な人を見るような冷ややかな視線を頂く運命にあるようです(^^;) いや理屈では分かっているんですけどね、RAWのメリットって。…でも実用上は、撮ってもまず現像という行為に及ばない。サムネイル代わりに同時記録したJPEGでおおよそ事足りてしまう。

…まあ、こればかりは輝度が高くて飛んでしまうような被写体をガンガン撮ろうという気分になるまでは、変わらないような気がします。そういう被写体に出会って 「違いの分かる漢」 になれる日は…まだもうしばらく先になりそうですがw