写真紀行のすゝめ:撮り方とか


PLフィルタを使ってみる


今回はPLフィルタについてです。風景撮影においては定番ともいえるフィルタですね。 形状は右図のようなものでレンズの先端につけて使います。PLとは polarization つまり偏光のことです。

世の中を飛び回っている光の正体とはとどのつまりは電磁波で、それぞれ勝手な方向に振動しながら 空間を伝わっていく…というのは物理の授業で習ったと思います。自然光(太陽光)も一般的な人工光 (電灯など)も、その振動方向に規則性はありません。

PLフィルタはこの雑然とした光の束から、特定の方向に振動する光を選択的に通すフィルタです。 構造は単純で、細かい線が等間隔で均一に刻んであり、これが2枚重ねになっていて角度を調節しながら使います。

これが何の役に立つかというと、ガラスや水面などの反射光(これも偏光の一種)を抑えることが出来るのです。 PLフィルタでこれをコントロールして余計な成分を減じてやると、被写体の本来もっていた色が鮮やかに見えてきます。 空に向かって使うと空の青さが強調されます。




偏光の効果は簡単に実験で検証することができます。液晶モニタも偏光を利用して表示しているので、PLフィルタをくるくると回してやると角度↑によって光が透過したりしなかったりします。




実際の事例


前振りはそのくらいにして実際の効果を見てみましょう。



これ↑は水田に写る空の様子です。PLフィルタを付けることで反射光が抑えられ(※)、水底の状態が良く見えます。こういう効果はデジタル処理で後から小細工することは出来ませんから、PLフィルタは今後もアナログ系のアイテムとしてしばらく息の長い商品になるでしょう。

※単に装着すれば良い訳ではなく、クルクルと回転させて具合のよい角度に調整する必要があります




この水面の表面反射を抑えるというのは海辺の風景を鮮やかに撮るには欠かせません。観光案内等のPR写真はほぼ間違いなくPLフィルタを装着して撮影されています。フィルタの無い状態では水面は反射光が被って白っぽく写るのが普通で、この場合は水の透明感がなくなり、いかにも素人写真という感じになってしまいます(^^;)。




水面ばかりでなく、植物の葉なども表面の光沢を押さえてやると、本来のしっとりとした緑色が豊かに見えてきます。




同じように、PLフィルタは空と雲のコントラストを変えることもできます。青い空に白い雲…という状況を演出したい場合に威力を発揮します。効果は太陽との位置関係で変化し、撮影者の左右どちらか90度の方向に太陽があるときに最大となります。

※広角レンズで広く空を写している場合は、あまり効かせすぎると空の青さにムラが出ることもあります。そのような症状が出たら状況をみながらクルクルとフィルタを回して不自然にならない程度のところを探します。




コンデジでは使えないの?


さてそんなに便利ならコンデジでも使えないのか…という声が聞こえてきそうですが、問題なく使えます。ただし安価なポケット型のカメラにはフィルタの装着できるネジ山などは切ってないのが普通です。だから基本的に "装着" することはできません。

…が、べつにガッチリと固定しなくてもレンズの前にひょいとかざしてやるだけで偏光フィルタとしての効果は十分に得られます。コンデジのレンズは一般に直径が小さいので、一眼レフ用に出回っているフィルタのうち最も価格のこなれた直径52mmなどを一個ポケットに忍ばせておいて、必要に応じて使うと良いでしょう。

使用方法は一眼レフのときと基本的に変わりません。まずは肉眼でフィルタを通して景色を見て、くるくると回しながら空が一番暗く見える角度 (または水面反射の薄くなるところ) を探します。そしてカメラのレンズの前にかざすだけ。簡単な割りに効果は絶大です。




寿命には注意




なおPLフィルタは長く使っているとだんだん劣化してきて効果にムラがでるようになります。炎天下の車内に放置したりすると一気に寿命が縮むと言われていますが、使用環境によって劣化の状態は異なるので一律に何年、とはいえません。撮影した画像に色分布の偏りや特定色(黄色が多いといわれています)の色被りが目立ってきたら、そろそろ交換のサインかもしれません。