写真紀行のすゝめ:お出かけとか


温泉旅館(和風)ってどうよ


今回は和風の温泉旅館について書いてみます。…おそらく、一番高くつくのではないかと思われる宿泊先です。




由緒正しい系の旅館


さてこのシリーズもずいぶん長々と書いているような気がしますが(^^;)、最後に王道とでもいうべき由緒正しい系の和風温泉旅館について書いて〆としたいと思います。

ただしいわゆる高級温泉旅館というのは世間では一名一泊5万円クラス(!!)以上と言われているようで、筆者のような貧乏人にはとても手が出せません。そこで、ここではとりあえず客室が10〜12畳以上あって仲居さんが部屋まで御用聞きに来てくれる程度のクラスを考えましょう。価格帯としてはリゾートホテルと似たようなゾーンです。

温泉旅館は必ずしも新築だから良いという訳ではなく、筆者的にはあくまでも "和の雰囲気" を感じられるところが良い宿だと思っています。この雰囲気の維持というのは地味なようで実は結構な人手がかかるもので、「やらなくて良いことは極力やらない」 式の経営合理化を進めると真っ先にカットされてしまう部分です。それを敢えて残しているところが和風温泉旅館の良さであり、また宿泊費が高めになっている一因ともいえます。

宿のグレードは、立地や設備もさることんがら、抱えている仲居さんの人数と質に現れます。一般に和風旅館は洋風ホテルより客室対応職員(仲居)が多く、教育にも手間暇をかけています。洋風ホテルでは昼間一回で済ませてしまうベッドメークなども、和風旅館では夕食後(敷き)、朝食後(上げ)の二回人を投入していますし、殆どの仲居さんは単なる布団要員/配膳要員ではなく接客をこなすスキルを持っています。

その差が如実に出るのが食事時で、仲居さんが少ない安めの旅館では宴会場や食堂でまとめてホイ式になりますが、十分な人数がいる旅館では客室まで個別に配膳してくれます。それもあらかじめ希望の時間帯を聞きに来てくれ、時間を見計らってコースメニューをいちいち何度も届けてくれたりします。洋風ホテルのルームサービスより和風旅館のほうがこのあたりの機敏は細やかで、宿泊客の懐深く入り込んできて、なおかつお節介にならない程度にスっと引いていきます。




実は泊まる客にも作法がある


和風旅館の過ごし方には実は阿吽の呼吸的な様式美があって、食事が済むとさりげなくお風呂を勧められたりします。 これは宿泊客が温泉に入っている間に布団を敷いてしまうためのもので、空気を読まずに 「いや、後で入るからイイです〜」 などと言うのは無粋なこととされています。

また最初に部屋に案内されてお茶とお菓子を頂くときも客がまず座るのは床の間側という作法があります。これには現在も男性優位の原則があり、田舎のねーちゃんなどが空気を読まずに上座に座っていたりするのはNGだったりします。食事にももちろん作法がありますが…いちいち解説すると字数が長くなってしまうのでここでは省略しましょう(^^;)

これを単に面倒くさいと思うか、貴重な伝統文化の体験だと思うかは、人それぞれです。…もちろん無頓着に振舞っても仲居さんは何も言わずニコニコと対応してくれますので、他のお客さんに迷惑をかけない範囲でくつろぐのは問題ありません。基本は静かであること。間違っても大声でどんちゃん騒いではいけません。できればTVなどは点けず、宵の時間帯を窓からの景色を眺めながら静かに過ごす…というのがお勧めです。




一人旅には最も厳しい宿泊先という側面も


ところで和風旅館は洋風リゾートホテルと同様、通常二名一室を基本としていて、一人旅の客を受け入れてくれません。しかも仲居さんの数が多く料理(朝夕二食)とセットで採算を計算しているため、洋風ホテルのように素泊まりの部屋代分だけ追加すれば一人客でも受け入れる…という対応には、なかなかなりません。そういう意味では洋風ホテルよりもハードルは高く、単独行動の多いカメラマンには厳しい宿泊先ということになります。

では独り者は永遠にこういう旅館でくつろぐことは出来ないのか?…というと、実は案外そうでもないのです。宿泊前日の早朝のうちに旅館組合の案内所に問い合わせて、部屋を斡旋してもらうとあっさり予約できたりします。旅行業者を通さないで前日に、というのがミソです。

このカラクリは、飛行機のキャンセル待ちと似ています。旅館の部屋は大手旅行業者が一定の 「枠」 を持っていて、前々日一杯までは実際に予約があろうがなかろうが押さえっぱなしになっています。この枠の中で売れ残った (或いはキャンセルとなった) 物件が、前日の朝一番からステルス状態を解除されて組合の案内所経由で当日客向けに販売されます。この時点ではもう空気を泊めておくよりは誰でもいいから客を迎えたほうが得策で、客の選り好みもありません。ゆえに競技カルタの要領で 「ホイ!」 と取った人の勝ちになるのです。

筆者は温泉旅館に泊まるときはいつもこの要領で通しています。面白いことに、このキャンセル待ち手法だと観光地特有のハイシーズンプレミアム料金ではなく通常料金で部屋が取れることが多いです。…まあ、そうそう都合よく希望通りの部屋が当たるとは限りませんけれども(^^;)